清水優心、奮起せよ! 報道から考える、現役ドラフトの位置づけの難しさ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#188】
初の現役ドラフトが終了、ファイターズは西武から松岡洸希を獲得した。しかしこのシステムが採用された経緯や今回の一連の報道を振り返ると、何か釈然としない思いがある。
2022/12/11
産経新聞社
現役ドラフト実施に至る動機づけ
初めての現役ドラフトが終わった。ファイターズは西武から22歳のサイドスロー、松岡洸希を獲得、古川侑利をソフトバンクに出した。報道を見ると実戦派リリーバー、古川(今季34試合、35.1イニング登板)が一番人気だったため、指名順でファイターズはトップを切れたようだ。古川はトライアウトから今季、ファイターズに加わり、主としてセットアッパー、それも単純な「敗戦処理」というより、味方の援護を待ちたいビハインド場面の「火消し役」のイメージで奮戦してくれた。大変使いでのある投手で、他球団からの一番人気も納得できることだ。来季は郷里の九州で大活躍してほしい。
指名順でトップだったということはよりどりみどりだ。12球団の指名選手中、最も若い松岡を獲得した。若いだけあって実績はまだないが、同じイースタンでよく見てきた投手だ。今季の仕事ぶり自体は古川に遠く及ばないが、伸びしろに期待したい。
松岡獲得の僕の第一印象は「現役ドラフトっぽくないなぁ」であった。フツーのドラフトで22歳を指名したっぽい。現役ドラフト実施に至る動機づけは、チーム内でくすぶっている戦力に出場機会を与えたい、というものだったと思う。例えばA球団には同タイプの俊足外野手が何人もいて、試合に出られる選手はそのなかの2人ほどに固定されている。が、他の選手もチャンスさえ与えられれば飛躍しておかしくない。そこにチャンスを与えようということだ。だから、僕の想定は陽川(阪神→西武)であったり、戸根(巨人→広島)のような中堅クラスだった。働きどころを得れば光るタイプ。
松岡の場合は、これから開花する「2019年西武ドラ3の好素材」を獲得だ。くすぶっているというより、土台作りをして、やっと芽を出そうかという選手。社会人出のルーキーと変わらない。とても面白い。
ところで僕は現役ドラフトの12月9日が近づくにつれ、清水優心を思って緊張した日々を過ごしたのだった。僕は率直に言って清水のまじめさが大好きだ。一時は正捕手(という発想は現在のプロ野球では現実的でなくなっているが)に最も近い存在だった。が、次第に出場機会を減らし、先ほどの物言いを用いれば「くすぶってる中堅クラス」になっている。
2軍で取材すると清水の評判はとてもいい。田中瑛斗のように下から飛躍する投手が出ると大概、清水とバッテリーを組んだ経験が生きている。が、清水は2軍投手陣の兄貴分をやってる場合じゃないのだ。シーズン通しての「トライアウト」で合格点は宇佐見真吾だけだったと新庄監督は明言している。宇佐見はももクロ、高城れにさんとの結婚(おめでとう!)でますます注目を集めるだろう。そこにオリックスから「優勝捕手」の伏見寅威がFA加入してきた。石川亮は入れ替わりのようにオリックスへ出たけれど、古川裕大が成長している。1軍出場のハードルは上がったと思っていい。