FA権取得も移籍しにくい日本球界。MLB式制度導入の検討を【小宮山悟の眼】
2015年のオフシーズンはFAなどの移籍が少なく静かだった。ここで改めてFA制度について考え直してみたい。
2016/01/29
有資格条件を満たしても、行使の宣言が必要な日本
プロ野球12球団が、間もなく2月1日のキャンプインを迎える。各チームとも今季の陣容がほぼ固まったが、2015年のシーズンオフは、例年に比べて特に移籍が少なかった。レギュラークラスの移籍といえば、千葉ロッテから東北楽天へFA移籍した今江敏晃くらいか。あまり、波風の立たない穏やかなオフだったと言っていいだろう。
移籍が当たり前と捉えられている米国球界とは対照的に、日本球界は国内でFA移籍を行う事例が少ない。
「FA取得までの期間が短縮されれば、より多くの選手が権利を獲得できて、移籍市場は活性化するだろう」という考え方もあるかもしれないが、日本のFA制度の問題は簡単には結論付けられない。
まず、メジャーリーグと日本プロ野球のFAは何が違うのか考えたい。
当然、取得までに必要な年数に差はあるが、一番大きな違いは、選手が権利を行使する宣言が必要かどうか、という点にあるだろう。
メジャーでは、資格に必要な条件が揃えば、その選手は自動的にフリーエージェントの身分になる。しかし、プロ野球の場合は、有資格条件を満たした選手が「権利を行使する」と宣言して、初めてFAの立場になるわけだ。
この違いは大きい。
たとえば、常時レギュラーとして出場するわけではない選手や、一軍メンバーのラインギリギリにいる選手などは、FA権を得たとしても、よほど自信がなければ、自ら手を挙げにくいだろう。そうなれば、自分をより高く売る自信のある一握りの大物選手だけしか、宣言しないことになる。必然的に、移籍市場は停滞化するというわけだ。
労使の観点で言えば、完全に雇用する球団側が有利の買い手市場。そうなれば、「FAを宣言しての残留は認めない」という方針を打ち出す球団が出てくるのも当然だ。球団によって宣言残留の扱い方に違いがあることは、一見すると不公平のように映るかもしれないが、現行のルール下においては仕方のないこと。それぞれの球団の特徴の1つと捉えることさえできるだろう。
このオフにFA宣言していた元広島の木村昇吾が、西武のキャンプで入団テストを受けることになったという。FA移籍が活発になるということは、木村のような例も増えるということだ。果たしてそれがプロ野球界に馴染むのか。FA宣言などせずに所属球団に留まったほうが選手にとっては幸せだという、終身雇用的な考え方のほうが日本球界には向いているのではないか。そういう見方があることも知っておかなければいけない。