自称「12球団一、ヘボいドラ1」? 原樹理は燕を進化させるか【新・燕軍戦記#20】
進化なくして連覇なし──。新たに「燕進化」をスローガンに掲げ、2016年シーズンに臨む東京ヤクルトスワローズ。中でも特に「進化」が望まれるのが、先発投手陣である。
2016/01/29
ドラフトで外れて良かったと思われるように
原は東洋大姫路高3年だった2011年夏に甲子園出場を果たし、ベスト8に進出。大学進学後は東都2部リーグで4年春に8勝を挙げて最優秀投手、秋には6勝して東洋大の2部優勝に大きく貢献し、最高殊勲選手、最優秀投手に輝いた。さらに駒大との入れ替え戦では3試合すべてに登板し、母校をみごと1部復帰に導いた。
真中監督が阪神との競合となった明大・髙山俊の抽選で外れくじを「当たり」と勘違いし、話題となった昨年のドラフトでは、ヤクルトからその髙山の「外れ1位」で指名されて入団。そんな経緯もあってか、原は自らを「12球団のドラ1で一番ヘボいんで」と自嘲気味に話す。
「一番、能力ないですから。実際、(1位指名から漏れた中に)いいピッチャーがいっぱい残ってたじゃないですか。だから『ああ、もう2位以降か……』と思ってたんで、『あれ? オレ?』って(笑)」
もっとも、彼には「実戦派」としての自負がある。
「打者との駆け引きだったり、いろんな球種、球質とかで打ち取っていくのが自分のスタイル。『剛腕』とかじゃないんで、そのへんで勝負していきたいですね。実戦は昔からずっと積んできて、バッターと対戦しながら『対バッターのピッチング』というのを追い求めてやってきたんで。ストレートの勢いとかスピードにこだわりはないんでブルペンでは華がないですけど(笑)、そこは周りがスゴくても焦らずにやっていきたいと思います」
2月1日から始まる春季キャンプ、原はドラフト5位の外野手・山崎晃大朗とともに、一軍メンバーに抜てきされた。担当の酒井圭一スカウトも「完成度の高いピッチャー。ローテーションの一角を任せられる逸材」と話すなど周囲の期待も大きいが、本人に浮足立ったところはない。
「目標ですか? とりあえず一軍で登板して、自分に与えられた役割を果たせればいいかなぁって思ってます。でっかく『新人王』とか、そんなんじゃないです(笑)。あとは積み重ねッスね」
だが、そんな原にも秘かにライバル心を燃やしている選手がいる。阪神に入団した高山である。
「高山を初めに指名して、それで外れて自分なんで……。そこは高山以上の成績を残して、『外れて良かったな』って思われるようにやっていきたいと思います」
そう話していたのは、昨年12月の入団発表の後のことだったが、それぐらいの働きを彼がすれば、間違いなくスワローズ投手陣の「進化」につながるはずだ。原樹理、22歳。楽しみなルーキーシーズンが、間もなく幕を開ける。