田中正義獲得にみる球団の狙い――モデルケースは杉浦稔大にあり【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#190】
ファイターズはホークスへFA移籍した近藤健介の人的補償として、田中正義を獲得した。2016年ドラフト会議で1位指名をしたもののクジで外し、球団にとっては7年越しとなるが、プロ入り後の実績は十分ではなく肩痛のリスクもある。それでも田中を獲得した理由はどこにあるのか。
2023/01/12
産経新聞社
肩のケアをしながら戦力になりうるか
考察の材料として12月、初めて実施された現役ドラフトを参考にするのはどうだろうか。僕はファイターズはなかなか興味深いことをしたと思っている。端的に言うと古川侑利を出して、松岡洸希を獲得したのだ。2022年シーズン、34試合(35.1イニング)0勝1敗3ホールド、防御率4.08の古川をソフトバンクに出して、1軍登板なしの松岡を西武から獲った。成績だけの単純比較なら大損ではないか。古川はリリーフで存在感を出した。
田中正義、0勝0敗1ホールド
松岡洸希、1軍成績なし
齋藤友貴哉、0勝1敗
トレードで阪神から来た齋藤を加えても昨季成績が古川ひとりに及ばない。これが「補強」なのかといぶかしく思う向きがあっても不思議ではない。投手陣再建はチームの課題のはずだ。なぜ結果の出てない投手を獲得するのか。
僕はここがファイターズの戦略なのだと思う。簡単に言えばポテンシャル重視だ。今、結果が出ていなくてもチームを変えたら飛躍の可能性がある。まぁ、こういうのは1、2年ではっきり答えが出てしまうことだから、ファンとしてはチーム編成担当の目利きに期待するのみだ。
田中正義のポテンシャルを開花させるためには、肩痛のケアが必須であるはずだ。ケガがちの田中はまだシーズンを通して稼働していない。登板間隔を空けるなど、きめ細かくコンディションを見極めて「戦力」にしていくイメージだ。
モデルケースは杉浦稔大じゃないかと思う。ドラ1でヤクルト入りしたものの肩痛に悩まされ、実力が発揮できなかった。但し、投げる球は一級品だ。杉浦を「戦力」にできたのはチームの自信になっているだろう。田中正義は(先発でなく)リリーフ起用なのかもしれないが、アプローチは杉浦のときを踏襲する気がする。うまくハマれば主戦級の投手に化ける。
既に創価大で同期だった池田隆英や球団職員の酒井俊明さんのことが報道で出ている。知ってる顔がいるのは田中にとってプラス材料だろう。まぁ、ファイターズは移籍選手がなじみやすい雰囲気だと思うからその点は特段心配していない。焦らないでひとつずつ仕事をしていくことだなぁ。そうすれば知ってる顔なんて関係なく、チームに居場所ができてゆく。ようこそジャスティス、田中正義。
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