カギは味方打線の援護――今世紀5人目の「20勝投手」は誕生するか【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は20勝投手についてだ。
2016/02/03
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厳格なローテーションの中で20勝到達には、打線の援護が不可欠
では今のNPBで「20勝」をマークするには、どんな条件が必要だろう。
21世紀以降の20勝の事例を並べてみると、はっきりした傾向が見えてくる。
4人とも年齢は20代半ば。上り調子の時期。負け数は一桁。投球回数は200回前後、防御率は3.00以下。
注目したいのは援護点だ。
これはその投手が投げている間に味方打線がとった点。4人ともに130点を超えている。そしてこれを9イニングに換算した援護率は6点前後。自責点を9イニングに換算した防御率を2倍以上上回っている。
4人の投手はまさに野球選手として一番脂がのった時期に素晴らしい投球を見せた。それだけでは20勝は難しい。どんな大投手でも、シーズン中に3点、4点と失点する試合が必ずある。そんな時に味方が大量点を取って勝ち星をつけてくれるような試合がいくつかないと20勝は見えてこないのだ。
昨年の最多勝は、セが前田健太(広島)の15勝、パも大谷翔平(日本ハム)、涌井秀章(ロッテ)の15勝だった。
今、最も20勝に近いのは今季もNPBで投げる大谷と涌井ということになる。とりわけ22歳の大谷には期待が高まるが、昨年の大谷の援護率は3.87(防御率2.24)、涌井は4.48(防御率3.39)。
昨年の両リーグ規定投球回数以上の投手で、援護率が6点台だった投手はいなかった。
20勝を達成するうえで、やはり打線の援護は必要不可欠だ。
そういう意味では、1試合あたり4.56得点と、セ・パ両リーグを通じて圧倒的な打線を誇るソフトバンクの投手陣に期待がかかる。
今季23歳の武田翔太は昨年13勝6敗。援護率は4.50(防御率3.17)だったが、本人の投球がさらにパワーアップし、味方打線がこれをうまく援護すれば20勝も見えてくるのではないか。
セでは14勝を挙げた阪神の藤浪晋太郎に期待したいが、阪神打線は1試合あたり3.25点しか挙げていない。藤浪の援護率も4.19(防御率2.40)だ。
実力の大谷翔平、藤浪晋太郎、実力+援護点の武田翔太ら、こうした投手から20勝投手は生まれるだろうか?