過度な重圧、期待からの解放――大田泰示25歳、8年目のリスタート【死亡遊戯コラム】
今年の巨人の春季キャンプは、14年ドラフト1位の岡本和真に注目が集まる。そんな中、静かに再スタートを切ろうとしている選手がいる。
2016/02/04
勝負はこれから
昨季はオープン戦期間中に左大腿二頭筋の肉離れで離脱。
4月末に1軍昇格した当初は4番を任せられることもあったが、60試合出場、打率.277、1本塁打、3打点という成績で終わった。
センターのレギュラーポジションには同じ90年生まれの立岡宗一郎が定着。
オフにはメジャー122発男のギャレットや元ロッテのクルーズの補強もあり、1軍争いも激化している。
大袈裟な書き方をすれば、大田はあらゆるものを失った。
高校の先輩の原監督は去り、55番も、スポーツ新聞の1面も、全部もうない。
もしかしたら、数年前の元ドラ1という肩書きもすでにあまり意味を持たないのかもしれない。
ピンチ? いやこれはチャンスだと思う。
18歳で栄光の55番を球団から託され、マスコミやファンからは常に過度な期待を背負わされ続けたプロ野球人生。
それが今、すべてのプレッシャーから解放され、剥き出しの大田がそこにいる。
騒がれることもなく持ち上げられることもない。静かなる逆襲を狙う背番号44。
今の巨人は右打ちの外野手が手薄だ。矢野謙次は移籍し、金城龍彦も引退、フレデリク・セペダとアレックス・カステヤーノスも静かに退団。
昨季も右の外野手に限れば出場数1位は長野久義122試合、2位が代走のスペシャリスト鈴木尚広45試合、3位は大田の44試合だった。
長いシーズン、チャンスは必ずあるだろう。
プロ野球選手は「期待の若手枠」から卒業した時が本当の勝負だ。
大田泰示、25歳。
未完の大器と言われ続けた男が8年目のリスタートである。