【キャリアハイ編】セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキングトップ30
2023/02/08
産経新聞社
キャリアハイの歴代最強打者ランキングトップ30
1位には先ほども述べた王。セイバーメトリクスの視点でみた場合、55本塁打を放った1964年ではなく、この1973年が実はキャリアハイとなる。wRAAは92.9。この年の王は、リーグ平均の打者が出場する場合に比べ、チームの得点を約93点増やしていたことを意味する。出塁率は5割。筆者の試算では、この年、王が立った560打席をセ・リーグのどの打者が担当したとしていても、読売は最下位に終わっていた計算になる。凄まじい影響力である。
2位は1986年のランディ・バース(阪神)。バースはこの前年の1985年の活躍の方が、阪神の優勝とその後の社会的影響の大きさから映像でも取り上げられる機会は多い。ファンの記憶に残る姿もこの85年のものであろう。しかし実際には得点生産の観点からその貢献は1986年の方がはるかに大きく、wRAAでは1985年を20点以上も上回っている。しかし、この1986年のバースの映像はほとんど出回っていない。セイバーメトリクスによる評価と社会的な扱いが一致しない好例である。
そして2022年の村上は85.5で3位に入った。弱冠22歳の若手が伝説級の打者のキャリアハイを次々と抜かしていった。やはり2022年は歴史的なシーズンだったようだ。9月中旬の時点では、1位の王をも上回るペースで数字を伸ばしていただけに、やや伸び悩んだ印象すら覚える。
4位以下にはウラディミール・バレンティン(2013・ヤクルト)、アレックス・カブレラ(2002・西武)、小鶴誠(1950・松竹)、松井秀喜(2002・読売)、藤村富美男(1950・大阪)、柳田悠岐(2015・ソフトバンク)、落合博満(1985・ロッテ)と、伝説的なシーズンが並ぶ。
なお本ランキングは、30人のうち13人が2000年代の記録となっている。プロ野球は2リーグ分裂以後だけで73シーズンが挙行された。そのうち23シーズンだけで13人なので、近年で発生率が上がっている。MLBへ移籍するルートが定着したために、今後は通算記録でランクインする選手は減少すると予想される。ただ単年で見た場合、逆の傾向になっているところが面白い。
ランキングにはベスト30からは漏れたが、藤村富美男(1949・大阪)、川上哲治(1940・読売)の記録も併記した。この記録は1リーグ時代のもの。1リーグ時代は試合数の関係などでランクインが難しいことから、別枠で取り上げている。