吉田輝星、新球場シーズンで飛躍の1年に。確かな成長を見せた先発3イニング【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#193】
吉田輝星が先発として、キューバ代表相手に好投を見せた。かつての「甲子園のスター」はプロで着実に技術を磨き、現在進行形で進化を遂げている。今シーズン、チームにとってもちろん大事な戦力となる。
2023/02/18
産経新聞社
今シーズンの立ち位置
17日、キューバ代表戦は11対2の快勝だった。「うちがWBCに出場しましょうか?」と軽口が飛び出すくらいのワンサイドゲームだ。特に12安打11得点の猛攻を繰り広げた野手陣の「アピール合戦」がすごかった。みんな魅力があるのでポジション数が足りない。しかも、この日はキューバの捕手としてアリエル・マルティネスが出場していた。スイングスピードの速さを見ているとDHで使いたくなる。DHの競争も只事じゃないぞと思ったのだ。
そんななかで今日、コラムに取り上げたいのは先発3イニングを任された吉田輝星なのだ。注目のマウンドだった。5年目のシーズン、飛躍が期待されている。ファイターズのドラフト史のなかでは清宮幸太郎と並び、甲子園のスターを射止めてきた代表例。僕自身も書いたことがあるが、「2023年開業される新球場のエース候補」の文句がマスコミの常套句だった。まだ「北広(きたひろ)の新球場」が漠としたイメージでしかなかった頃、ファンは「エース吉田輝星、4番清宮幸太郎」を夢想し、胸を高鳴らせていたのだ。
その2023年開業のシーズンが来た。JR快速エアポートの車窓からエスコンフィールドがはっきり目視できる。チケット争奪戦も始まっている。ずっと先だと思っていた未来に僕らは追いついてしまった。じゃ「新球場のエース候補」はどうなのか、というわけだ。
言っておくが、僕は「清宮も吉田輝星も期待はずれ」といった揶揄には与(くみ)しない。そりゃ清宮は本塁打王を獲ってないし、吉田輝星は最多勝に輝いていない。大枠だけを言えば「甲子園のスター」はプロで結果を出していない。が、僕は2軍からずっと彼らを見ている。たどってきたアプローチがわかるし、身に着けてきたものがわかる。
キューバ戦のマウンドはまさにそんな姿だった。
「新球場」シーズンの吉田輝星の立ち位置を確認しておこう。先発投手としては当落線上だ。本人は先発に意欲を燃やしているが、現状、ローテーションは頭数が足りている。来季、上沢直之がMLB挑戦ということになれば、それこそ「新球場のエース候補」が必要になってくるが、6枚のローテ投手にどうしても輝星に加わってほしい状況かと言われれば、そこまでではないだろう。上沢、加藤貴、伊藤、ポンセ、根本、鈴木…、と簡単に名前が上がる。
ピッチングスタッフ全体を考えればセットアッパーとして働いてほしいのじゃないか。新任の建山義紀コーチに課せられたテーマの(最大の?)1つは中継ぎ、抑えの再整備だ。ファイターズは札幌ドーム時代、先行逃げ切りの勝ちパターンを得意にしていて、武田久、マイケルをはじめ名投手をブルペンに擁していた。栗山ファイターズの最後の頃から新庄ファイターズ1年目まで、その勝ちパターンが瓦解したのだ。外野が広く、フェンスが高い「ピッチャーズパーク」でディフェンス野球ができなくなっていた。