「ポスト谷繁」の懸案解消なるか? アマ球界随一の鉄砲肩・加藤匠馬に寄せる期待
今季4位に沈んだ中日ドラゴンズにあって懸案のひとつと言える捕手。そんな中日が今回のドラフト5位指名で獲得したのが青山学院大の加藤匠馬(たくま)。まさに「鉄砲肩」と評したくなる強肩が売りである彼の生い立ちや現状、プロに対する思いなどを聞いた。
2014/11/07
Yu Takagi
初めて野球で挫折
「もちろん練習は厳しかったですけど、それまでは正直あまり野球で苦労したことはなかったのですが、すべての面でレベルが全然違いました」
加藤は大学入学後、全国から集った精鋭たちの中に混ざると大きな差を感じたと言う。
だがそこで歯を食いしばり、なんとか3年春にレギュラーを獲得。
その強肩を遺憾なく発揮する場を得た。
失礼を承知で言えば、打撃は前に飛ばすのもやっとという状態からのスタートであったが、徐々に感覚をつかみ、余り目立っていなかった俊足も光るようになった。
だが、さらなる試練が待っていたのは4年の秋。1部2部入替戦にこそ勝ったものの、最下位に終わった春と開幕ダッシュに失敗したチームを見て、河原井正雄監督は捕手の交代を決断。
かねてからインサイドワークが課題に挙がっていた加藤は、1年後輩の猪又弘樹に正捕手の座を奪われ、以後ベンチを温める日が続いた。
喜びに包まれたドラフト会議当日ではあったが、「入替戦でなんとかチームを1部に残さないと」と、春に続き入替戦(11月8日から)に回ることになったチームの現状に危機感を募らせている。
「ベンチから野球を見て、配球やポジショニングの仕方など勉強になることもあれば、〝自分だったらこうするな〟とか気づきはとても多いです。まずは入替戦でチームが勝つために、1日1日をムダにしたくありません」と加藤は前を向いた。
その姿勢は、同じ控えという立場でも入学直後とはまったく異なるものだ。
今季の中日の捕手陣を振り返ると、来年45歳になる谷繁元信選手兼任監督が91試合出場したほかは、松井雅人の67試合が続く状況。『ポスト谷繁』の座をかけて、加藤にも割って入るチャンスは充分あるはずだ。
最後に「ともに夢を追いかけた高校時代の仲間で、今後も野球続けるのは僕だけ。彼らの思いも背負って、そして応援してもらえるように1軍で試合に出て活躍したい。まずは守りでチームかから信頼される捕手になりたいです」とプロへの決意を語ってくれた加藤。
中日ファンだった野球少年の夢は、高校時代の戦友の夢をも背負い、憧れの場所へと続いていく。