年々早くなる選手の仕上がりも、故障発生では意味なし。落合博満氏が語る、育成で重要なオフの身体作り【横尾弘一の野球のミカタ】
まもなくオープン戦が本格化する。選手は精力的に自主トレを行い、仕上がりは年々早くなっている。
2016/02/29
横尾弘一
トレーニングの内容の吟味を
その“強制”という部分が問題になり、選手会が交渉してポスト・シーズンが明確化された。12~1月が本当の意味で自由になると、選手たちは自分で考えながらトレーニングに取り組むことができるようになる。これは、球団との契約という面で見れば大きな前進であった。
すでに実績を残している選手にとっては、野球人生を自己責任で過ごすという意識を高める契機にもなった。しかし、その一方で指導者のサポートを必要とする選手が、ひとり、あるいは選手同士で考えなければならなくなったのも事実だ。
「監督をしている時、オフの期間もチームの育成方針の下で、コーチとマンツーマンで練習することができれば、もっと早くに出てこられるだろうと思える選手はいた。それに、技術などをマスターする際には、自分のペースではなく、指導者にたとえ“やらされながら”でも、覚えていくのが大切なこともあるでしょう。料理人だって、伝統工芸士だって、そういう時期があるはず。だから現状のポスト・シーズンは、特に若手にとって不幸だと感じることもある」
また、自主的に取り組むトレーニングにはマシンを使うものなどが多く、それは科学的にパフォーマンスを高めると実証されている。しかし、野球の動きの中で鍛えていないという点に、落合は懸念を抱いている。
「私はウエイトをはじめとする科学的トレーニングを一切否定しない。陸上競技専門の指導者とトレーニングするのもいいだろう。でも、我々の仕事は野球なんだ。科学的トレーニングによって、ゴロを取ってからスローイングするまでの動き、理想的な打撃フォームを反復して身につける時間が減ってしまうのでは本末転倒。野球の動きと科学的トレーニングを両立することが望ましいのは言うまでもない」
体は早目に仕上がっている。だが、それが野球をするための体であるかどうかが重要なのだ。高度なパフォーマンスを披露できても、軽度な故障を繰り返すようでは一流とは言えない。プロ野球は、その点をしっかり見極め、若手の育成を考える時代になっているのではないか。
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