クセの矯正と向き合うオコエ瑠偉。「人は失敗から学ぶ」ベテラン助っ人が授けたメッセージ
非凡なセンスを発揮する楽天期待のルーキー、オコエ瑠偉。果たして、開幕一軍の可能性はあるのか。
2016/03/06
阿佐智
ゴームズからのアドバイス
キャンプを打ち上げた東北楽天。
寒冷地の仙台を本拠地とする関係上、多くの球団が大半のオープン戦を本拠地で消化する中、このチームだけは全国を「巡業」する。今年は、沖縄を離れたあと、二軍のキャンプ地である宮崎に入り、「新春みやざきベースボールゲームズ」に参戦した。
2月28日、日向お倉ヶ浜球場。昨年の韓国チャンピオン、斗山ベアーズとの試合を前に、フィールドに現れた楽天ナインの中に、話題のルーキー、オコエ瑠偉の姿があった。
キャンプ初日の打撃練習では打球が前に飛ばず、プロの壁を感じさせたものの、その後の対外試合では、一時チーム最多の打点を挙げるなど適応能力の高さを見せ、キャンプ打ち上げ後の遠征にも一軍帯同が決まった。このまま順調にいけば、開幕一軍も現実的になってくる。
その表情にはまだあどけなさも残るが、体躯は普通の高卒ルーキーのそれではない。打席でバットを構えるその姿は、誰の目にもすでにプロで数年プレーしているように見えるだろう。姿だけではない、その立ち振る舞いもやはり並みのルーキーとは違う。一軍選手に混じっても臆することなく、かつ明るく振る舞うそのキャラクターは、すっかりチームに溶け込み、先輩選手や球団スタッフにもいじられている。
この日も試合前もグラウンドに入るなり、球団スタッフに声をかけられ、リラックスムード。他愛もない話をしている中、先日正式に契約を済ませチームに合流したメジャーリーガー、ジョニー・ゴームズがやってきた。
オコエは、高校時代からメジャーリーグの中継を見ていたらしく、二人は球団スタッフの通訳を交えながら、ゴームズがレッドソックス時代に本拠地、フェンウェイパークで放った「グリーンモンスター越え」のホームランの話題でしばし盛り上がった。
その話がひとしきり終わると、球団スタッフが、メジャー15年のキャリアを誇るゴームズに、目の前のルーキーにアドバイスを送るよう促した。ゴームズはオコエにこの言葉を授けた。
「若いんだから失敗を恐れることはない。成功から学ぶものなんて実はないんだ。人は失敗から学ぶ」
さらにこう続けた。
「今は、自分と似たタイプの選手を探して、それを真似てみるといい」
そう言葉を残し、ベテラン助っ人は去っていった。
この後、オコエに「ゴームズが言うような、見本とする選手はいるのか」と尋ねてみた。彼の答えは意外なものだった。
「いや、今はまだそれどころじゃないです。自分のクセを直すので精いっぱいですね」
プレーを見習わないという意味ではない。大ベテランの言葉を噛みしめながらも、まだその過程にたどり着いていないというのが現状なのだろう。日々、成功と失敗の繰り返しの中から一日一日成長を遂げているように感じる。