「MLB球団からも警戒されるように…」ソフトバンク中南米スカウトが語る独自スカウティング。“金の卵”を発掘できる理由とは?
2023/05/29
産経新聞社
「日本経由でもMLBから注目されるんだ」
昨年獲得した2人も、2021年に私が獲得した育成の4選手、アレクサンダー・アルメンタ投手(18歳・メキシコ出身)、マイロン・フェリックス投手(23歳・ドミニカ共和国出身)、フランケリー・ヘラルディーノ内野手(18歳・ドミニカ共和国出身)、マルコ・シモン外野手(18歳・ドミニカ共和国出身)と同じく、アメリカ球界を経由せずに日本に来た選手です。
アメリカ球界からリリースされた選手を獲得しても、MLBのスカウト達から日本球界を下に見られるだけなので、MLB球団よりも先に優秀な選手を見つけ、獲得することにこだわりたいです。そういう意味でもホークスは、ロベルト・スアレス(現サンディエゴ・パドレス)やリバン・モイネロ(*両選手ともに萩原スカウトの獲得選手)のような成功例を提示できることは大きいです。もちろん長くホークスでプレーしてくれればうれしいですが「日本経由でもMLBから注目されるんだ」というのは育成選手たちのモチベーションに繋がるはずです。
また、MLBと契約しても、アカデミー時代はドミニカンサマーリーグ開催期間中の3カ月間しか給料が支払われません。一方、日本では10カ月です。トータルの額で大きな差が出るわけではありませんが、NPB球団もMLB球団と契約する以上のメリットを提示できればプロスペクトを獲得できるはずです。例えばシモンのケースで言えば、彼はホークスとピッツバーグ・パイレーツを天秤にかけてホークスを選んでくれました。ただ、こういったプロスペクトを先駆けて獲得していることで、MLB球団のスカウトたちからは「日本のソフトバンクホークスの動きには気をつけろ」と警戒されるようになりました。特に15歳のプロスペクト、オスーナがMLBではなく、日本球界を選んだことはMLBスカウト勢にもかなりのインパクトを与えたと聞いています。なので、私も誰を視察しに行っているのかと悟られないように動かねばいけなくなりました(笑)。
もっともドミニカではMLBの30球団が各チーム、スカウト5~6名体制で動いているのに対し、こちらは1人です。マンパワー的には敵わないので、良い情報が常に取れるように各方面との良好なパイプ作りが重要です。こちらでのスカウト活動も9年目になり、その点では大分そのパイプも太くなってきたのではないでしょうか。
いずれにしても、私の仕事は獲得し、契約をするところまでなので、その先は選手の努力次第です。ホークスにはスペイン語スタッフもたくさんいますし、ドミニカの広島カープアカデミー出身で、日本の独立リーグでのプレー経験もあるウィルフレイセル・ゲーレロ通訳が選手たちの兄貴分としているのも心強いです。先日も筑後キャンプに顔を出してきましたが、みんな着実に成長の跡が見られたので満足しています。彼ら育成選手の活躍如何で、今後のNPBの外国人選手の獲得方針に一石を投じることができるのではないかと思います。