記憶に留めたい大ファール。新天地で働きどころを得た福田光輝【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#201】
西村天裕とのトレードでチームに加入した福田光輝。激しい二遊間の一軍枠争いだが、懸命なアピールを続けており、新天地で活躍のチャンスを掴みかけている。
2023/06/11
産経新聞社
持ち前のフルスイングでボードを破損
6日、広島戦1回戦の8回、一死走者1塁で打席に立った福田光輝が初球を振り抜いた。福田は西村天裕とのトレードで今季、ファイターズにやって来た内野手だ。西村も新天地ロッテで活躍しているが、福田だって負けちゃいない。持ち前のフルスイングから打球は高々と1塁側ファウルゾーンに上がった。と、内野席上方に設置されたビジョンを直撃したじゃないか。野球的には単なるファウルだが、これはファイターズファンなら記憶にとどめたい1シーンではないか。
エスコン初の大型ビジョン破損!
景気よく「破損1号」と呼んでもいい。ビジョンはドットが1つ欠けてしまって、黒いポッチが残っていた。2015年の交流戦、ソフトバンク柳田悠岐がハマスタの大型ビジョン直撃弾を放ったときも同じように黒い点が残ったものだ。まぁ、あれは豪快なホームラン、今回はファウルという違いはあるけれど、修理する側から見れば大差ないではないか。僕は福田よくやったと思う。最近、ファイターズファンの間で「光輝」の名にかけて「シャイニング」と呼ぶ向きもあるやに聞くが、「シャイニング」とは全く逆の「輝くものの破損」を成し遂げたという意味でも味わい深い。
しかし、大型ビジョンのボールがぶつかったところが黒く残ってるのを見て、「あー」ってテンション上がるのはなぜだろう。「あー、お金かかるー」「あー、知ーらない」みたいな子どもっぽい考えがパッと浮かぶのだ。「言ーってやろ言ってやろ、せーんせいに言ってやろ」的な、大人に見つかったら叱られるだろう感がぬぐえない。大人に見つかるも何もCS中継してるし、パテレ行きにもなっているのだ。ぶつけたのが福田だって誰でもわかる。大人には十分バレている。まぁ、あれかなぁ、今シーズン開業したばかりのエスコンフィールドの新品の大型ビジョン破損だから「やっちまった」感が強いのか。
でも、(あんまり度重なるようだと怒られるだろうが)プレーヤーに逸話がつくのはいいことだと思うのだ。阪神へ移籍した渡邉諒が「直球破壊王子」なら、福田はさしずめ「ビジョン破損王子」か。いや、あんまり聞こえがよくないなぁ。まぁ、だけど「よくわからない右投げ左打ちの背番号35」「ロッテから来た地味な内野手あんまり知らない」みたいな薄ぼんやりした認識より、「ビジョン壊した福田」「あ、あいつか。頑張ってるよね」の方がずっといいと思うのだ。ファンの間でキャラ付けができる。キャラはそこから育てていけばいい。
そして懸命な読者は気づいておられるかと思うが、福田光輝はとてもいい選手なのだ。活躍したシーンというと5月21日、京セラのオリックス戦、コットンから打った2ランホームラン(プロ初ホームラン!)が思い浮かぶが、真骨頂はホームランではなく、つなぎの意識だ。一見、派手さはないが、ひとつの四球、ひとつの進塁打、ひとつのバントでチームに流れをもたらす。ロッテで実績が残せなかったプレーヤーなので、スタメン起用が続いたときは新庄監督大丈夫かなぁと心配にもなったが、プレーぶりを見て感心した。状況判断のできる選手だ。そして、チャンスにかじりつこうとする姿勢がグッと来る。