阪神・村上頌樹を支えるストレート。コントロールで重要なのは前足の踏み込み 【工藤公康の眼】
今年3月に『プロフェッショナル投手育成メソッド 一流選手へ導く“投球メカニズムとトレーニング”』を出版した工藤公康氏。交流戦が終わり熱い夏を迎える中、編集部が気になる選手や話題について、工藤氏に現場で選手やコーチに伝えてきた指導メソッドの視点も織り交ぜながら語ってもらった。
2023/06/29
産経新聞社
キレのいい球質を武器に、ファウルでカウントを整える
セ・リーグで最大のブレイクと言えるのが、大卒3年目を迎えた村上頌樹投手(阪神)です。これまで、一軍での登板はルーキーイヤーに2試合投げただけでしたが、今季はローテーションに入り、開幕から31イニング連続無失点というセ・リーグ最長タイ記録を樹立しました。
一番の武器は、ストレートのキレにあります。トラックマンの数値を見られるわけではないので、あくまでも印象になりますが、バッターの反応を見ていると、回転軸、回転数ともに空振りやファウルを取りやすい球質のように感じます。
そのうえでコントロールが安定しているため、投手有利カウントでピッチングを進めることができてきます。バッターはストレートに狙いを定めていたとしても、初球からアウトローの球を打ちにいくことはそうはありません。「最初から難しい球に手を出して、1球で終わりたくない」という心理が働くからです。時には甘いコースに入るストレートもありますが、キレのいい球質を武器に、ファウルでカウントを整えることができています。
これだけストレートが優れていると、バッターとしてはストレートを狙わざるをえない状況になっているはずです。そうなると、変化球がより生きてくる。そこで、「変化球にも対応しなければいけない」と考え始めると、ストレートがズドンと来る。バッターからすると、的をなかなか絞れないタイプと言えるでしょう。