ホークス内川、「つなぎの4番」もスモールベースボールにあらず。強打者が揃う中で求められる役割
数字だけ見れば、4番打者らしい選手が揃うホークス。しかし工藤監督は就任後、現役最高の安打製造機を4番に据えた。その方針は今季も変わることはない。
2016/03/18
制約を課された状況下で役目を果たす
ではなぜ、ソフトバンクは内川を4番に据えたのか――。工藤監督は常々、内川のことを「つなぎの4番」と評している。この「つなぎの4番」というフレーズは、近年のプロ野球界では比較的多く耳にする。
代表的な例で言えば、05年に日本一に輝いたロッテのサブロー(打率.313、14本塁打、50打点)や、09年WBCでの稲葉篤紀などが挙げられるだろう。
ただし、「つなぎの4番」を採用するチームの多くは、いわゆる「スモールベースボール」を得意としており、裏を返せば4番を任せられるような絶対的な打者がいないケースがほとんどだ。
その点、昨季のソフトバンクには30本塁打以上を記録した「大砲」が3人おり、決して「スモールベースボール」を体現したチームではなかった。
それでも、内川はシーズン通して4番を務めあげ、日本一という結果も残した。
4番という打順は、打線の軸となるのはもちろん、「チームの顔」でなければならない。その意味で、柳田はレギュラー定着まだ2年目、14年に4番を任された李も、外国人選手であるうえ、移籍2年目。松田は抜群のリーダーシップを持ち、高い実績も誇るが、シーズン通して4番を打った経験はない。
さらに、昨季でいうと3番に「トリプルスリー」を狙う柳田がいたことで、その後を打つ4番という打順には、柳田が塁上にいる際には時に待球や右打ちなど、多くの「制約」が課されることになってしまった。それも、内川の4番起用を後押しした要因のひとつかもしれない。
30本塁打カルテットに囲まれる形で4番を担った内川は昨季、数字上では大きく成績を落とした。しかし、主将を任されていることからもわかるように、チームメイトへの求心力は非常に高い。
キャンプを見ても、どんな若手選手よりも最後までグラウンドに残って黙々とバットを振り続けているのは、内川だ。
昨春のキャンプで、右打者史上最長となる8年連続打率3割がかかっていることについて、内川に質問した。「記録を達成する、しないということよりも、数多くの偉大な打者の皆さんがなぜ、8年以上3割を続けられなかったのか。そこが気になる」
結果、内川自身も打率3割の連続記録を7年でストップさせることになってしまった。
そこには、実績を積み上げてきたからこそ求められた、多くの「制約」が無関係だとはいえないはずだ。
強力な打者を揃えるソフトバンク打線だからこそ、4番は「誰でもいい」というわけにはいかない。事実、工藤監督は今季も内川を4番で起用することを明言。しかし、オープン戦途中で肩に違和感を訴え、数試合欠場している。
ホークス3連覇を達成する上で、33歳の「つなぎの4番」の存在は必要不可欠。状態が気がかりだ。