球宴で大活躍の万波だけでは足りない! 後半戦の逆襲に欠かせない軸となるべき選手【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#204】
今年のオールスターで万波中正がMVPを獲得。これを自信に後半戦は前半戦以上のパワフルな打撃を見せてほしいが、万波だけではなく、元々主力として期待されている選手の活躍がなくして、チームの浮上にはつながらない。
2023/07/22
産経新聞社
打線の軸は据えてほしい
新庄野球は打線を組み替える。今季は故障者が多くて、やりくりしてるから猫の目打線なのかと思ったが、ケガ人が戻っても組み替えている。「仰木流」のオリックス中嶋聡監督も打線を組み替えるけれど、難しいのは向こうは優勝している(結果の出ている)チーム、こっちは覚えることの多い若いチームというところだ。4番が郡司裕也になったり今川優馬になったりしていたのは「連敗中、チームを活気づける起爆剤の役割」だと理解できるが、それだと選手は常に応用問題を解いているようになるのだ。「昨日は3番を打っていたけど今日は1番を打つ応用問題」の打者が出て、「昨日は5番を打ってたけど今日は2番の応用問題」の打者がつなぐ野球。それを「トレードで来たり、2軍から上がった応用問題」の打者が返す野球。
新庄野球は状況判断の野球だ。センスが要る。イメージの準備が要る。本当は打線を固定し、役割を固定した方が手っ取り早い。「2番打者のオレが2番打者の仕事をする」という命題があるだけで、「そんなオレが今日は4番を打つ」という応用問題はない。
僕は打線の軸は据えてほしいと思っている。現状、万波もマルティネスもクリンナップよりも6番7番あたりを打ってたほうが似つかわしい打者だ。打率は高くないが一発の魅力がある。2死からでも四球のランナーが出れば、ドカーンと2ランがあり得る。だけど、彼らを主軸に据え「4番打者のオレが4番打者の仕事をする」を覚えてもらわなくてはチームがいつまでたっても仕上がらない。
万波もマルティネスも強く振れるのが持ち味だ。意外と右に逆らわずに打つこともできる。
万波は今季開幕戦、楽天・田中将大に子ども扱いされ、スライダーにクルクル回っていた。が、いつの間にかバットが止まるようになり、右にも強い当たりが打てるようになった。(といって何を狙っているのかものすごくわかりにくい打者なのだが)長打にできるツボは昨シーズンより増えたと思う。マルティネスが5番にいれば勝負を避けられることも少ないだろう。まぁ、「オールスターの勢い」で何とかなるほど同一リーグの攻めは甘くないが、ここが飛躍のチャンスだ。彼の更なる成長を信じている。
で、僕が今回、一番書きたかったのは実は清宮幸太郎、野村佑希のことなのだ。オールスターブレイクに入る最後の試合、海の日の西武14回戦(17日、ベルーナD)、清宮は2打席立って脈がないと判断されて代打を送られた。野村は2軍に落とされ、そもそも不在だった。ファイターズにとっては10連敗目を喫した屈辱的な試合だ。チームにまったく精彩がない。みんな疲れてどんよりくすんで見えた。
僕が言いたいのは清宮も野村も必要だということだ。ファイターズが本当に強くなるためには万波、清宮、野村がグラグラせずチームの真ん中にいなきゃいけない。そういう日が来ないと本当の意味の浮上はない。万波は頑張っている。だけど彼だけじゃ足りないのだ。これはオールスターMVPの話に見せかけて、「万波だけじゃ足りないぞ」と言いたい原稿だ。みんなまだまだ力不足だ。だけど、ここが軸にならないとチームにならない。連敗中のチームにあって「代打を送られた清宮」と「2軍落ちした野村」が奮起してくれなくては。彼らは万波の晴れ姿に何を想っただろうか。