一連の報道における違和感。野球賭博問題と金銭授受問題は同レベルの話なのか?【小宮山悟の眼】
プロ野球界は野球賭博問題を発端に、さまざまな選手間同士での金銭の授受が明らかになっている。
2016/03/24
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選手自らが負けを選択することはあり得ない
繰り返しになるが、私の現役時代で勝利試合の円陣声出し役に祝儀を贈るという習慣はなかった。
だから、それが具体的にどのような雰囲気の中で行われているのか、正確には知らない。ただ誤解を恐れずに記すが、私はこの円陣のシステムの話を聞いたとき、「なるほど。そういう盛り上げ方もあるのか」と思った。
日々、勝負の世界に身を置くプロ野球選手は、みなさんの想像以上に、験を担ぐものだ。もちろん、すべての選手がそうだとは限らないが、少なくとも私はそういうタイプだった。
その時にツキを持っている選手が、チーム全体の験を担いで試合に臨む。そうやって盛り上げていくという考え方は、私にとっては十分、理解のできるものだった。金額的に明らかに度が過ぎていたのは事実だが。
ちなみに選手の立場で言わせてもらえば、選手自らが試合で負けることを選択するなどあり得ない。勝利給や年俸アップなど、チームが勝利することは、長い目で見れば他の選手にもプラスになることなのだから。
外部の人間と接し、おそらく最終的には反社会勢力と通じている野球賭博と、仲間内で験を担ぎ合う円陣声出しのシステムを同じレベルで論ずるのは個人的には違和感を覚えたというのが今回の騒動や一連の報道に対する感想だ。
同時に、プロ野球界が今回の騒動を機会に襟を正すべきなのは間違いない。
何かにつけ、ゲーム性を持たせ現金の授受をするというプロ野球界独特の体質を、快く思わない方がいることを意識しなければならない。
こう言ってしまっては身もふたもないが、まさに『球界の常識は、世間の非常識』であるのだ。
今後はすべての球団で、現金の受け渡しを禁止にすることになったそうだが、良い決断だったと思う。
プロ野球界のOB、関係者として、1日も早く野球の試合、選手のプレーが一番の話題になるように願う。
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小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。