野球賭博と円陣での「声出し」で起きた金銭授受――刑法と野球協約での“罪”の重さの違いは?
プロ野球が25日開幕した。野球賭博や各球団の金銭授受が明らかになり、プロ野球界に対して世間から厳しい眼が向けられている。
2016/03/29
「賭博罪」が適用される仕組みとは? 刑法と野球協約の違い
野球賭博ではないが、12球団で調査を行った結果明らかになった円陣での「声出し」の際の金銭授受。NPBの調査委員会では野球協約に違反していないという見解を出しているが、その線引きは難しい。
野球賭博については、野球協約で八百長や暴力団との関わりの観点から禁止されている。また「声出し」での金銭授受は試合の勝ち負けを巡る問題だけに、八百長の疑いも浮上してくる。過去には、1969年10月に西鉄ライオンズの選手による八百長事件が発覚。西鉄の池永正明ら4人が処分される「黒い霧事件」が起きている。
だが、そもそも野球協約に違反していないからといって、刑法に違反していないということにはならないのではないか。
――「声出し」での金銭授受は刑法の「賭博罪」に該当しないのでしょうか?
(声出しのうえでの金銭授受は)負けたときにお金を払わなければいけなくなるので、リスクとリターンがあります。お金をもらうだけなら賭博罪に当たりません。しかし、もらうときもあるし、払わなければいけないときもあるとなると賭博罪に該当しますね。
例えば、巨人が行っていた「声出し」は、お金を渡す場合ともらう場合の両方を行っていたといいますから、そうなれば、賭博罪に当たります。
ただ、(野球協約上では)暴力団が関わる野球賭博と「声出し」とでは質が全然違います。
――野球協約上での野球賭博と、「声出し」による金銭授受の違いは?
野球の試合の結果にお金を賭けるのが野球賭博ですね。そして暴力団が介入しルールを決めた中で行っています。一方「声出し」は選手同士でお金をやり取りするという、大人の遊びの一環ですよね。あとはファンの感情の問題ですよね。ファンあってのプロ野球ですから。
「声出し」以外でも、中日が試合前のシートノックでミスをした選手から1回約500円の罰金を課し、集めたお金を児童施設へ寄付していたと発表された。
ヤクルトやDeNAは、選手間で高校野球の勝敗に関わる「野球くじ」を行い、金銭のやり取りがあったことを認めている。
前述したように、賭博罪はもらう側と支払う側の両方の可能性が生まれる場合だけ成立する。
――野球賭博を発端に球界で明らかになったさまざまな金銭問題について、刑法上は「賭博罪」になるのでしょうか。
シートノックでの罰金や「野球くじ」と、(高木京が巨人の同僚選手と通っていた)闇スロットは賭博罪です。ただ、野球協約違反にはなりません。
ちなみに「監督賞」は監督が選手にお金をあげるだけだから賭博ではない。祝儀なので、お金を渡すだけならOK。倫理的にもいいと思います。
中日のように施設に寄付していたケースも賭博に当たりませんね。
――金銭が関わればすべて賭博ではないのですね。
野球賭博はダメだということは徹底すべきでしょうね。これは八百長が疑われるし、暴力団に取り込まれる恐れもある。ギャンブルをやりたければ競馬やパチンコなどを自己責任でやればいい。繰り返しになりますが、野球賭博については絶対に手を出してはいけません。
暴力団が介入して「胴元」がいて「ハンデ」がある。これが野球賭博です。(選手間だけで行っている)「声出し」は野球賭博ではない。暴力団と関わりを持つことになる野球賭博と「声出し」の問題を同列に論じるのはピントがズレていると思います。
ただ、「声出し」が野球賭博につながっていくのであれば、やめるべきでしょう。