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谷内亮太が示したプロフェッショナルリズム、後輩の明日へと向かう心の糧に【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#209】

谷内亮太の引退試合を見て、誰もがきっとまだ現役でできると思ったのではないだろうか。彼のこれまでにプロ野球選手として見せてきた姿は後輩に大きな影響を与えた。

2023/09/30

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産経新聞社



引退試合翌日に見せた野村の豪打

 僕は引退試合のなかで、野村佑希に注目していた。道新スポーツのウエブ記事で球場の行き帰り、谷内のクルマに同乗して、野球の話を聞かせてもらうのが「僕にとってありがたい時間だった」とコメントしてるのを知った。古くは第1次大沢政権時代、主戦捕手だった加藤俊夫が江夏豊の専属運転手(?)を買って出て(つまり、こちらは加藤のクルマ)、配球や投手心理について学んだのが有名だ。それを連想した。球場の行き帰りは後進にとって貴重な学びの場だ。帰り道、その日の試合を振り返り、明日へと向かう心の糧を得る。野村は思うところあるだろうと思った。ぜひその姿が見たい。
 
 野村佑希は今シーズン、ずーっと苦しそうだった。マジメな男なのだ。考えてしまう。サードで悩み、4番で悩み、ファーストで、外野で悩み、様々な打順で悩み、スタメンを外されて悩んだ。この日は2番レフトでの出場だ。HBCラジオ解説の岩本勉さんは「2番はサインでバットを出さなきゃならない場面がある。考えずにバットを出してほしい。それを期待しての2番じゃないか」という見立てだった。エンドランなどで振りに行ったほうがかえってヒットに結びつくことがある。そういうイメージだと思う。
 
 僕は野村は好きに打たせてやりたい。悩んでる顔を見て、ずーっとそれを思っていた。進塁打が必要なときは自分で考える。彼が頭角をあらわしたときのあの鮮烈さがなりをひそめている。ジェイはもっとスケールの大きなバッターだよ。ファイターズがこれから強くなっていくには、早い話、万波中正、野村佑希、清宮幸太郎だ。彼らが伸び伸びプレーできるようにしてやりたい。1、3塁の重盗とか、2ランスクイズとかハマれば気持ちいいだろうけど、それよか野村がドカーンと打つほうが見たいよ。そこを伸ばせばいい。
 
「2番レフト野村」は8回裏、一死1、3塁でショートゴロを放ち、その間にランナーが生還して1打点を稼いだ。4打数0安打1打点。僕にはやっぱり苦しそうに見えた。「ロマン・クリンナップ」のKJM砲のなかでは、万波に差をつけられてしまった。本当は内野で4番の野村を谷内に見せたかったな。
 
 野村佑希の大爆発は谷内引退試合の翌日、エスコン今季最終戦(28日)に持ち越された。4回代打のタイムリーも、7回美しい放物線を描いた13号ホームランも、ジェイの思いの丈をぶつけたものだったろう。一日遅くなった。間に合わなかった。谷内は見ただろうか。純な後輩の気持ちを受け取ってくれただろうか。

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