コリジョンルール導入で小さな怪我はむしろ増える。奪われかねない野球の醍醐味【小宮山悟の眼】
今季よりNPBにコリジョンルールが導入された。この導入は野球をどういう方向へ変えるのだろうか。
2016/04/11
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怪我防止が最大の目的だが……
今季から、コリジョンルールと呼ばれる新ルールが導入されたことは、多くのプロ野球ファンがご存じだろう。
本塁上で走者と捕手の激しい接触を避けるため、走者の捕手へのタックルや、捕手のブロックを禁止するという内容だ。
厳密に言えば、これまでのルールにおいても、守備側がボールを持たない状態で走者の進路をふさいではいけなかった。だが、捕手がベースの一角を空けている場合は、「進路を完全に妨害していない」という解釈をして、認められてきた。レガースを使って本塁前を完全にブロックしても、「足の後ろ側は空いている」という捉え方をしたわけだ。
ブロックは捕手の技術のひとつと考えられてきたが、これからは明確に、「ブロック禁止」となる。
導入の目的は怪我の防止だ。
2011年、MLBの代表的なキャッチャーである、サンフランシスコ・ジャイアンツのバスター・ポージーが、ランナーのスライディングを受けて、靭帯断裂&骨折という大怪我を負った。事態を重く見たMLBは、昨年からコリジョンルールを導入。日本のプロ野球もその後を追う形でルールを追加・変更した。
このルールを導入したからといって、試合中の捕手の怪我が完全になくなるわけではないと思う。もちろん、ポージーのケースのような骨折や靱帯断裂、または脳震盪などの大怪我は少なくなるだろう。しかし、小さな怪我は、むしろ増えるのではないか。
ブロックできないことで、捕手は必然的に追いタッチにいくケースが増える。これまでは主に足で、場合によっては全身で走者を防いでいたのに、これからは腕一本で立ち向かうわけだ。力負けして、手首や肘、肩を痛める捕手が増えるのではないかと危惧している。