コリジョンルール導入で小さな怪我はむしろ増える。奪われかねない野球の醍醐味【小宮山悟の眼】
今季よりNPBにコリジョンルールが導入された。この導入は野球をどういう方向へ変えるのだろうか。
2016/04/11
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捕手の技術を向上させる道も選択肢に
選手、ベンチ、審判、ファンに、コリジョンルールが完全に浸透していない今季は、判定を巡って混乱するシーンがたびたび起こるだろう。
最後に個人的な意見を言わせてもらえば、コリジョンルールの導入に賛成ではない。すでにルール改正され、少なくとも今季は適用されることが決まっているが、今季の動向次第では再考の余地もあるのではないか。
野球において本塁は特別な場所で、捕手は特別な存在だと思う。
“死守”という表現は、捕手が本塁を守った時にのみ使われるべき言葉。そして捕手は、その特別な場所を守るために、選手の中でただ一人、プロテクターやレガースを着用してプレーしている。
もちろん、本塁のクロスプレーで捕手が大怪我をすることを良しとするわけではない。ただ、ある程度の怪我は技術で防げると思うからだ。
以前古田敦也から、タックルしてくるランナーに対しての対処法として、「体の力を抜いて、身を任せる」という話を聞いたことがある。力を入れて踏ん張ってしまうから、怪我につながる。捕手の技術を向上させる道も探るべきではないか。
かつてロッテで共にプレーしたフリオ・フランコが、次のように語ってくれたことがある。
「なぜホームベースだけが違う形をしているのか。守備側から見ると、まさに家の形をしたあのベースだけが特別だからだ。守備側は、敵がその家に侵入してくるのを防がなければならない。キャッチャーはその上で一番大事なポジションだ。捕手がなぜレシーバーではなくキャッチャーと呼ばれているかといえば、投球をキャッチするだけでなく、侵入してくる敵もキャッチするためなんだ」
野球の醍醐味の一つが奪われないことを望む。
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小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。