MLB日本人野手3人目の3割打者へ、青木宣親に必要なのはスタミナと頑健さ【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は日本人メジャーリーガーで打率3割を打った選手の話だ。
2016/04/21
Getty Images
日本人メジャーリーガーで3割をマークしたのは松井秀喜とイチローだけ
今季の日本人MLB野手はイチロー、川﨑宗則、青木宣親の3人。規定打席に到達しているのは青木だけ。
2008年にはイチロー、田口壮、松井秀喜、松井稼頭央、井口資仁、城島健司、岩村明憲、福留孝介と8人もの野手がプレーしていたことを考えると、寂しい限りだ。
守備はともかく、打撃で満足な成績を残す選手が現れてこないために、MLBはNPBの日本人野手をなかなか獲得しない。
NPBからMLBへ移籍する日本人野手も2013年の田中賢介を最後に出ていない。
これまでアメリカでプレーした日本人野手14人、これにMLBへ昇格できなかった中島裕之(現宏之)を加えた15人のMLBでの打率を見ていこう。
2001年に日本人野手としてMLBに挑戦したイチローはいまだに現役。その偉大さがわかる。今年で16年目だ。
イチローは16年のうち最初の10年間、打率3割以上をマークし続けた。首位打者も2回、日本人選手で規定打席に達して3割を打ったのは他には、松井秀喜が2回記録しただけだ。
2005年にたった一度だが、松井秀喜の打率(.305アリーグ9位)がイチロー(.303同11位)を抜いたことがある。このことを記者から聞かれたイチローは、無言のままだった。
そして、2010年を最後に日本人の3割打者は出ていない。
MLB移籍前のNPB通算打率を見てもわかるように、MLBへ移籍する打者は、NPBでも屈指の強打者だ。通算打率3割を超えていた打者も15人中7人。
しかしMLBでは、その打棒を存分に発揮した選手は少ない。
MLBはNPBよりも投手のレベルが高い上に、約180日間で162試合を消化する過酷な日程で肉体面でも精神面でもタフさが要求される。移籍前のNPBの通算打率よりMLBの通算打率のほうが高いのは、田口壮(NPB.277、MLB.279)だけだった。
そんな中で青木宣親には、期待がかかる。
NPBでの通算打率はイチローの.353に次ぐ.329。首位打者3回、3割6回、そしてイチローにもできなかった200安打2回という記録も持っている。
さらにMLBでの通算打率.285は、イチローの.314に続いて高い。
青木には、2010年のイチロー以来、6年ぶり、史上3人目の「日本人MLB3割打者」の期待がかかるのだ。