カープ新井貴浩、打撃センスなしと評された男が2000本安打――偉業を支えた強固な礎
広島東洋カープの新井貴浩が4月26日の東京ヤクルトスワローズ戦、3回表に成瀬善久からレフト線へ二塁打を放ち、NPB史上47人目の通算2000本安打を達成した。
2016/04/26
ボールが当たれば……
武勇伝はいつも「条件付き」で語られてきた。
広島工業高時代は旧・広島市民球場の外野スタンドの看板付近まで打球を飛ばす超・高校級のパワーを誇った。
駒澤大では、打球の飛距離のみならず、「打った瞬間のバットの音は半端なものではなかった」とかつてのチームメイトも証言した。
しかし、彼らは、武勇伝に必ず一言付け加えた。「ただし、バットに当たれば……」。
駒澤大ではクリーンアップを務めたものの、通算本塁打はわずか2本であった。1998年、ドラフト6位で入団した大砲は「将来の」主砲候補として期待された。
入団当初の打撃コーチだった長内孝はユーモアを交えて振り返る。
「体は大きくて力があって、ボールを遠くに飛ばす、だけの選手でした。格好から、タイミングから、センスは感じませんでした」
ただ長内は、新井のとてつもなく強い武器を見つけていた。「練習をいくらやっても故障しませんし、持ち前の明るさで『もうダメだ』と言いながらもついてきました」。打球を遠くに飛ばす力と厳しい練習に耐えうる体力である。
指導方針は決まった。理論や理屈でなく、数多くバットを振らせる。そして、体で覚えさせることにした。
「タイミングからして衝突のような打ち方で間合いが取れませんでした。少しでも間合いが取れるようにしたいと思いました」(長内氏)