カープ新井貴浩、打撃センスなしと評された男が2000本安打――偉業を支えた強固な礎
広島東洋カープの新井貴浩が4月26日の東京ヤクルトスワローズ戦、3回表に成瀬善久からレフト線へ二塁打を放ち、NPB史上47人目の通算2000本安打を達成した。
2016/04/26
努力の男
首脳陣は実に様々な練習を課した。200球近く入った箱を3つ用意して、連打でスイングさせた。無呼吸でスイングをさせた。レンガを置いて、傾斜をつけた状態でバットを振らせた。同年代の選手と並んで練習させ、ハートにも刺激を与えた。
長内はその狙いを説明する。「バッティングは下半身が大事です。でも、どうしても上体で打ちにいってしまうところがありました。だから、練習の中で体(上体)を疲れさせ、そこで下半身の動きを覚えさせました」
すると、新井はバットのヘッドは走るようになり、下半身を使った打撃ができるようになっていった。
しかも、苦労してつかんだ技術は「本物」である。同年代に、ともに汗を流した朝山東洋(カープ二軍守備・走塁コーチ)もしみじみと語る。
「新井は決して器用ではありませんでした。だから、こういう練習の中でも手を抜くことができませんでした。僕なんかは、目を盗んで抜くところもあったのですが、新井はそれができませんでした。でも、今思えば、それが良かったのだと思います。体が強いから、練習が継続できました」
芸術的なスイングや天性ばかりが才能ではない。泥臭く、がむしゃらに、これも堂々たる才能である。
努力と苦悩と出会い。これこそが、2000本という偉業を支えた礎である。しかも、この礎はどこまでも強固である。
2000本は通過点。新井貴浩のプレーを「条件付き」で語るものは、もう、どこにもいない。