待たれる守護神・増井の復調――「麻酔タイム」が続く限り、北海道日本ハムの浮上なし【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#28】
札幌に移転して以来、投手陣を中心に守りの野球が土台にあるファイターズ。特に貯金を積み重ねていく上で、抑えの安定感が何よりも求められる。
2016/04/29
ファイターズ野球=守りの野球
過去、ファイターズのクローザーでは、圧倒的に「武田寿司」のネタが人気を集めた。長く抑えを担当した武田久を寿司屋の大将に見立てて、登板するとSNSで「よう大将、今日はいいネタ入ってるかい?」と言いだす。出てくると必ずランナーを出す等、「ひとネタ」くれる、というシャレのようなものだ。すんなりは終わらない(すんなり終わるときは「大将、今日はもう看板かい?」と言ったりする)。
これは登板過多になりがちなクローザーの宿命かと思うのだ。いつも調子がいいとは限らない。カミソリと同じでだんだん切れ味が落ちてくる。それでも「顔」で抑えてしまう。ピシャリと三者凡退とはいかなくても、経験や度胸で何とかしてしまう。「武田寿司」は相手チームのファンに新鮮な「ひとネタ」は提供したかもしれないが、大概の場合は「もう看板」のゲームセットだった。
で、増井も昨シーズン、抜群の成績を上げてはいるが、案外ランナーを出していた。結果的には抑えても、僕らはわりとハラハラしていたのだ。敵チームのファンから「増井寿司」の声もかかった。ネタ化する気配は濃厚に立ち込めていたのだ。
それが今季は「増井タイム」だ。オフィシャルに名前がついた。かなり不安定だ。出来不出来の差が激しい。技術的にはフォークのコントロールがバラつく。グラウンドに叩きつけるような軌道になったり、あるいは浮いて打ち頃の半速球になったり。4月24日のソフトバンク5回戦、内川聖一にサヨナラ弾を食らったのも浮いたフォークだった。
つまり、5割復帰はめでたいが、まだ波乱含みなのだ。ファイターズは北海道移転以来、ずっと「先行逃げ切り」だ。中継ぎ、抑えの頑張りで僅少差のリードを保つゲームプランだ。それはおそらく「ビッグバン打線の東京ドーム」から広い札幌ドームに本拠地が変わったとき、必然的に選び取られた戦略だろう。ディフェンスの野球。そのために俊足の外野手を歴代揃えてきた。
増井の復調が待たれる。「麻酔タイム」が続くかぎり、まだ重要なピースが埋まらない。ファンはぼーっと気を失いかけたりしながら9回を耐えるのだ。
試合に勝って、企画ユニ対決で惨敗した日本ハム。ファン心理をくすぐる限定ユニ全プレ【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#29】