「1番サード郡司」で見えた打線の方向性――厳しいチーム内ポジション競争の象徴【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#223】
4月9日、11日と地方球場で行われたソフトバンク2連戦で新庄監督は「1番サード郡司裕也」を起用した。郡司は1番打者らしく打線をけん引し、答えを出した。
2024/04/13
産経新聞社
今年目指す野球が体現できたソフトバンク1回戦
予備日込みの変則シリーズとなったソフトバンク2連戦(1、2回戦)はシーズン序盤の注目カードだった。狭い地方球場(藤崎台、北九州)で山川穂高、ウォーカーの加わったホークス打線にどう立ち向かうのか興味津々だった。パ・リーグ3連覇中のオリックスは出足が悪く、11日現在、下位に低迷している。笑い話だが、知人のBsファンは「(このところの常勝球団ぶりに不慣れで)実家に帰ったように落ち着く」とSNSに投稿していた。まぁ、評論家筋の評価も山本由伸を欠いたオリックス下げ、重量打線のソフトバンク上げが目についた。いわばパの本命印(◎)の打たれたチームと、その打力の最も生きそうな狭い球場でぶつかるのだ。
藤崎台の第1戦はF山﨑福也、H有原航平の先発ゲームだった。アメリカ帰りの有原と当たるのは初めてだ。有原は「長いイニング大体いいピッチングをするが、1イニングだけ幽体離脱したように崩れる(その後、何もなかったように立ち直る)」というハム時代の特徴通りだった。その崩れたイニングが初回だった。詳細は後述するが、そこで先制したファイターズは「手堅い逃げ切り」のゲームプランを完遂する。この試合は山﨑福也ー伏見寅威の「サチトラ」バッテリーがハムで躍動した。「サチトラ」の打線の料理の仕方がベテランらしいコクがあったのだ。
配球の妙もある。内側のラインの出し方も絶品。残像を使った組み立ても見事。それ以前にテンポがいい。打者が頭の整理をしきらないうちにポンポン、テンポよく投げ込む。録画を見直したけれど、初見のときは気づかない滋味がある。シンプルに言えばやることなすこと「根拠がある」のだ。重量級のホークス打線を手玉に取っていく。
もう一つ感心したのは山川を殺し切ったところだ。この試合、ホークス側から見ると山川が大ブレーキだった。走者を置いて場面で、ことごとく打ち取られ結局ノーヒット。圧巻だったのは5回裏、無死満塁で三ゴロゲッツーに切って取った場面だ。伏見はあらかじめサード郡司裕也に3塁線を固めるよう指示していたという。単純な打球傾向のデータに加えて、「この球種このコースならここに飛ぶ」という伏見の経験がモノを言った。まさに「根拠がある」のだ。その後、杉浦稔大→北浦竜次→金村尚真→田中正義と小刻みにつなぎ、ホークス打線を近藤健介の2ラン1本に抑えてしまった。僕はディフェンス(投手力+守備力)でホークスを封じたことを評価したい。シーズン初戦、うちはこうやりますよというご挨拶だ。しかも、福也はそんなに調子よかったわけでもない。絶好調時なら根拠なんて言わなくても球威で抑え込むケースがあり得る。この日はフツーの福也なのだった。