平田、高校時代から変わらぬ勝負強さ。突出した数字なくも『何かをやってくれる男』が中日をけん引
中日ドラゴンズの平田良介の特長と言えば、ここ一番で結果を出す「勝負強さ」。それは高校時代から何ら変わりない。
2016/05/21
数字より記憶に残る一打
中日が好調をキープして、20日試合終了時点で、首位巨人に2.5ゲーム差の3位につけている。
開幕投手のエース大野をはじめ、ローテーションの多くがケガなどで戦列を離れた。また打線も、開幕から活躍を見せていた5年目の高橋周平が骨折で長期離脱するなど、順風満帆なスタートではなかった。
ところが、現在は救援陣の奮闘を借りながらも、上位につけている。とりわけ、チーム打率がリーグトップと打線が好調なのが、開幕前の予想に反して、中日が勝てている理由だ。
その打線の中で部類の勝負強さを発揮しているのが3番を打つ平田良介だ。開幕はスタメンだったものの、故障で一度は離脱。4月22日に復帰すると、いきなり本塁打を放つなど、チームの上昇気流に一役買っている。
打率.277、ホームラン5本、得点圏打率は.293(20日試合終了時点)と突出した数字はほとんどない。
あるのは、ここという場面で打つ勝負強さだ。
数字より記憶に残るタイプの選手といえるだろう。
そんな平田を見ていると、大阪桐蔭高校時代を思い出す。
かつて、大阪桐蔭の西谷浩一監督がこんな話をしていた。
「練習ではほとんど存在感がないんですよ。普通のバッターと変わらない。当時のうちには平田と同じ学年で、彼よりいい選手がいました。でも、平田が試合に出ると活躍するんです。練習でどうっていうより、バッターボックスの中に入ったら、体中にあるものを全て出せる、そういう選手。実は中学生の頃から彼のその部分に注目していました」
理詰めの野球論というより本能で野球をしていくタイプといったほうがいいかもしれない。そもそも、高校入学後に、平田を使い始めたのも、ど派手な活躍からだったと西谷監督は言う。
「平田が1年生の時に、夏を前にした練習試合でセンターを守る選手がケガをして、先のこともあると思って、平田を使ったんです。そしたら、いきなりホームラン。でもまぁ、その時は、よく打ちよったなくらいにしか思わななかった。そして2日目、もう一回、平田を出してみようか……で、またホームラン。練習と試合で全然違うんです」
平田が一躍、その名を轟かせたのも痛快な一打だった。
1年生秋の近畿地区高校野球大会決勝戦でのことだ。
1-6と5点ビハインドの5回裏、無死満塁で平田は打席に立った。相手投手は、同学年で、当時、将来のプロ候補と騒がれていた大前祐輔(社~早大~JR東日本)だった。カウント0-2と追い込まれたが、3球目・インハイのストレートを大根ぎりのようなスイングで強振すると左翼スタンドにぶち込んだのだ。
本人曰く「第六感が働いた」のだというが、インコース高めのストレートを迷いなく強振する高校生はなかなかいない。チームはその後逆転、平田はヒーローになった。
2年春のセンバツの1回戦では甲子園のバックスクリーンに決勝本塁打をぶち込み、3年の夏には、準々決勝の東北高戦で1試合3ホーマーの離れ業をやってのけた。とにかく活躍が派手で、ここという場面で結果を残す選手だった。