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チーム打率リーグトップも下位低迷の西武。将来に向けたベンチワークへ一考を

パリーグで下位に沈む西武が苦しんでいる。状況を打開するための策は講じているが、根本的な問題は解決に向かっていない。かつての王者、西武に、今、何が起きているのか――。

2016/05/23

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若手を育てられない背景にあるものとは

 佐藤は、西武の首脳陣がとりわけ期待を寄せてきた左腕だ。2014年序盤、当時の潮崎哲也二軍監督(現ヘッド兼投手コーチ)は佐藤を「最も期待する若手の一人」に挙げている。持ち前のコントロールに加え、入団時に76kgだった体重が過去1年間で85kgに増えるほどスケールアップしていた。ストレートの最速は143kmから151kmに上がっている。

 しかし、体が変化したことで投げるバランスが変わったのか、佐藤は制球難に陥る。中学生の頃からコントロールを武器にしてきた左腕は、「制球力より速球派になっちゃっています」と自嘲気味に話すほどだった。

 フォームがバラバラになり、思うような球を投げられず、とりわけ右打者に死球を与える場面が増えていた。

「フォームをいろいろ変えなくちゃいけないとか、考えすぎてしまいました。投球動作の最初で左肩が背中のほうに入りすぎて、リリースに持っていくときに腕が遠回りになっちゃうので、ボールを引っ掛けることが多くなって、デッドボールになることが多かったです」

 2014年は6月26日のイースタンリーグ・ヤクルト戦を最後に、登板がないままシーズンを終えた。そうした状況を乗り越え、昨季は2軍で18試合に投げてリーグ最多の12敗を喫したが、経験を積んだ。そして今年、1軍デビューを飾ったのだ。

 もちろん、佐藤を飛躍させたい気持ちは西武首脳陣、とりわけ潮崎コーチは強いはずだ。だが現状として、経験を積ませる余裕はとてもない。そうしたチーム状況は理解できるが、ベンチが腹をくくるべき部分もあるのではないか。

 若手に実戦機会を与えられない場面は、8回表の2死1塁でも見られた。6回裏から守備固めに入っていた永江恭平に対し、木村昇吾を代打に送ったシーンだ。ここで代わりの打者を起用するくらいなら、6回から木村を守りにつかせておけば良かったのではないだろうか。 

 5月12日に今季初の1軍昇格を果たした永江だが、5月22日時点でチームの戦力になっていない。打撃に課題があるからこそ、磨きをかけるには実戦の機会を少しずつでも与えるべきだ。

 さらに言えば、5月13日の日本ハム戦では1点リードで迎えた9回、ショートのスローイングに不安のある金子侑司に代えて永江を守備固めに送るべきだった。結果、金子は先頭打者の平凡なショートゴロを送球エラーし、そこから逆転負けを喫した。

 こうした采配で勝敗を覆された一方、永江が持ち前の守備でも戦力として貢献できていないのである。

 プロ野球において、目の前の結果は極めて重要だ。ただし、将来を見据えて戦略をとっていかないと、どんな組織でも繁栄することはできない。

 西武にとって、良薬は目の前の勝利しかないだろう。5月17日からのロッテ戦で11カードぶりの勝ち越しを果たすなど、最悪な状況から抜け出す兆しがないことはない。

 その原動力となったのが、髙橋光成、多和田真三郎という若手投手の頑張りだ。二人にはチーム事情で先発機会が回ってきた一方、若手がこうしたチャンスをつかむことでチーム力は高まっていく。だからこそ首脳陣は思い切って、彼らを伸ばすような采配をするのも手ではないだろうか。

 果たして、西武はこの苦境をいかに脱していくのか。チームの現在も、将来も、ベンチワークに大きくかかっている。

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