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内容ある水野達稀の打席。「ミスタースリーベース」記録更新の可能性も【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#227】

田宮裕涼がブレイクしている今シーズン。交流戦に入ってからは現役ドラフトでソフトバンクから加入した水谷瞬が猛アピールしている。目に見える数字で結果が出ている彼らはもちろんだが、それ以外にも内容ある打席を務める水野達稀も注目してもらいたい。

2024/06/09

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産経新聞社



「つづき物」の醍醐味

 さて本題、というかいちばん書きたかったこと。水野達稀のことなのだ。僕は広島戦の3日間、水野に見入っていた。第1戦は7番ショートで4の2、2戦は2番ショートで4の0、3戦も2番ショートで今度は4の1。特に負けた2試合は上位を打って結果が出せていない。たぶん本人的には納得いかない広島遠征だったと思う。ひと頃は「振ればヒット」という感じだったが、ちょっと調子が下降気味ともいえる。
 
 だけど、僕は水野に魅了された。とてもいい打席を務めるのだ。狙いがある。根拠がある。内野のいい席で見られたこともあるけれど、水野の打席のアプローチをずーっと想像しながら見た。シチュエーションのなかで、どう考え、何をやろうとしているか。待ち球は何か。4の0、4の1だから結果は出てない(特に第2戦はチャンスで打てなかった)けれど、アプローチがあるのだ。これは積み重ねであり、無駄にはならない。バッティングは必ず復調するときが来る。しっかりした打席を務めていればそのときグンと飛躍するだろう。
 
 3連戦をトータルで見る「つづき物」の魅力について冒頭触れた。水野の広島遠征でそれを感じたのは、第3戦の7回表だ。ずっと内容のある打席を務め、しかし結果に結びついてはいない。でも、水野の特徴はしっかり振ることだ。この人は素振りを重ね、自分のスイングを固めてきた。軸が強く、しっかりしている。スイングスピードが速く、ブンッと音がしそうだ。ライトに会心の当たり。迷わず水野はダイヤモンドを駆ける。まわりのカープファンから「うおお」「あぁ」「速い!」と声が上がる。今シーズン7本目の三塁打だった。
 
 かつて『プロ野球批評宣言』で草野進(蓮實重彦の筆名であった)が三塁打の美しさを称揚したけれど、三塁打には野球の魅力がすべて詰まっている。打力、走力、守備力&連携、スライディング、クロスプレーのスリルetc. 水野達稀は「ミスタースリーベース」だ。今シーズンこのまま打ち続ければパ・リーグ記録の16本(53年、阪急 レインズ)はおろか、プロ野球記録の18本(51年、阪神 金田正泰)が狙えるペースだという。
 
 その三塁打の鮮烈さが忘れられないのはもちろんだが、3日間見て、あぁ、こういう過程を経て、ひとつ結果が出せたのか、という「つづき物」の醍醐味があったのだ。野球人としての真摯な姿に感じ入った。

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