海を越えて帰国する松坂大輔と、海を越えられなかった金子千尋、それぞれの決断
メッツからFAとなった松坂大輔の日本球界復帰が決定的となった。その一方で、オリックスからFAした金子千尋は、今季ポスティングシステムによる海外移籍を諦める決断を下した。さらに右ヒジにメスを入れることにもなり、今後の交渉にも影響を及ぼしそうだ。
2014/11/26
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「便利屋」ではなく「先発」勝負を求めて、海を越える松坂大輔
メッツからFAとなっていた松坂大輔投手の、ソフトバンク入団が決定的となった。
近日中にも球団側から正式発表される運び。契約は3年総額10億円以上ともみられ、背番号は代名詞である「18番」を用意しているという。
西武時代の06年以来、9年ぶりの日本球界復帰。米国も含めて新天地を模索した松坂の中で、最大の決め手となったのは「先発ローテーション投手」としての座だったという。
キャンプは招待選手として過ごし、開幕直後にマイナーからメジャーへ昇格した松坂の今季の立ち位置は、いわゆる「便利屋」。34試合に登板し、3勝3敗、防御率3.89の数字を残したが、先発起用は9試合だけ。
故障者が出た時など、スポット的に先発ローテーションに入り、大半は中継ぎ起用。クローザーが相次いで炎上した際には臨時で抑えも務め、メジャー初セーブまで記録した。
ブルペンでも勝ち試合でのセットアッパーから、負け試合を任されるモップアップまで、役割は幅広く、一定ではなかった。
いつ訪れるかわからない出番に備えるのは、34歳を迎えた肉体には酷だっただろう。最高のパフォーマンスを発揮するための、足かせにすらなりかねない。
松坂は今季全日程終了後、「野球人生にとっていい1年になった」と、今までのキャリアにない激動の1年を振り返った。その上で「先発をやりたいという気持ちは、これからも変わらない」と先発投手への強いこだわりをのぞかせていた。
大リーグでも、今の松坂獲得に手を挙げる球団はあるだろう。ただ、その評価はやはり「便利屋」で、「先発ローテーション投手」として求める球団が現れる可能性は低い。
かたや、国内に目を移せば、ソフトバンクの他にもDeNA、古巣・西武などが先発投手として日本復帰へのラブコールを送り続けた。来季中には35歳となる。今後の野球人生を左右しかねない重大な決断。長く、確かなキャリアを続くために、米本土からの撤退を選んだ。
長く先発投手として過ごしてきた松坂だが、その器用さからなのか、中継ぎとしての意外な適性を示したことも、皮肉にも米球界の評価を変えることとなった。
実際1年を終え、今季先発としての成績は2勝3敗、防御率4.24。対して中継ぎでは1勝0敗1セーブ、防御率3.44と、先発を上回る数字を残した。
メッツのテリー・コリンズ監督は「確かに大輔は優れた先発投手だ。ただ、同時に優れたリリーバーでもある」と何度も繰り返した。
特に今季のメッツは守護神パーネルが開幕2日目に右肘じん帯断裂で今季絶望。代わってバルベルデ、ファーンズワースと実績あるベテランを次々と抑えに指名したが、ことごとく打ち込まれシーズン中に退団。11年には巨人に在籍し6試合、防御率6.26に終わったトーレスと、松坂の2人が中継ぎ陣の柱となる始末だった。チーム事情も、松坂の評価に対してはマイナスに作用してしまった。
今季日本一に輝いたソフトバンクには、摂津、大隣、武田、スタンリッジ、中田、東浜、帆足ら先発ローテーション候補は枚挙に暇がない。帰国しても高いレベルでの争いが待っているが、「先発ローテーション投手」として、強力投手陣の中での競争を新天地とした。