ライオンズ佐藤勇が炭谷のサインに首を縦に振った――プロ初勝利をもぎ取った1球【中島大輔One~この1球をクローズアップ】
西武期待の4年目左腕、佐藤勇が5月24日の楽天戦でプロ初勝利を挙げた。3度目の正直となった先発3戦目でカギを握ったのは、5回のピンチで投じた1球だった。
2016/05/31
過去二度の敗戦のハードルになっていった5回
交流戦で上位巻き返しを狙う西武が、波に乗るDeNAとの初戦で先発マウンドを託すのが佐藤勇だ。開幕投手の菊池雄星を中5日で回す手もあるなか、首脳陣が高卒4年目の左腕を抜擢したのは、前回登板で大きな壁を乗り越えたことが大きい。
5月24日に西武プリンスドームで行われた楽天戦で、プロ入り3度目の先発マウンドに臨んだ佐藤はキャリア初勝利を挙げた。
「前回5回を投げ切ることができずにマウンドを降りたので、今回5回を投げ切ることができたのはよかったと思います」
あどけない笑顔で振り返った左腕にとって、これまで試合の5イニング目は大きなハードルだった。プロ初先発した5月11日の楽天戦では2対3の状況から2失点し、続く17日のロッテ戦では1対0で勝利投手まであと1アウトに迫りながら、4失点で今季2敗目を喫している。
それが初めて本拠地のマウンドに立った24日の楽天戦では、3度目の正直で初勝利を勝ちとってみせた。
相手エースの則本昂大と投げ合うなかで、なぜ、過去2回はね返された壁を乗り越えることができたのか。その伏線には、前々回と前回登板の反省がある。
2点リードで迎えた24日楽天戦の5回表、佐藤はKOされてきた過去2戦と同じように得点圏に走者を背負った。先頭打者の足立祐一にフォークをうまく拾われセンター前に落とされると、1死後、福田将儀には内角高めのストレートをセンター前に弾き返される。
そうした嫌な流れで迎えたのが松井稼頭央だった。11日の対戦では内角を攻め切れず、初打席でセンター前ヒットを許している。そして24日の第1打席では2死からストレートの四球で歩かせるなど、嫌な印象を植え付けられたのかもしれない。
ピンチで迎えたベテラン打者に対し、初球はフォークが外角低めに外れてボール。続く2球目、バッテリーが選択したのは内角高めの139kmストレートだった。