戸田、カープ左腕の系譜を受け継ぐか。マエケンのアドバイスがさらなる成長のきっかけに
開幕前にエース・前田の移籍したカープ。強力な打線を擁し、セリーグで首位に立つ。あとは投手陣だ。特に「左腕投手の台頭」があれば、より戦力は盤石なものとなる。
2016/06/02
高校時代は九州のドクターK
カープ黄金時代には、いつも強烈なサウスポー投手の存在があった。江夏豊、大野豊、川口和久……中継ぎを彩った清川栄治も忘れてはなるまい。
リーグ屈指の強力打線に機動力、開幕当初の4番であるエクトル・ルナを故障で欠いても、今年のカープの勢いは衰えを知らない。
前田健太のメジャー移籍で不安視された投手陣も、野村祐輔の好調やクリス・ジョンソンの昨年同様のパフォーマンス、さらには九里亜蓮ら若手がチャンスを生かし、チームのピンチを救ってきた。
ここに、「左腕投手の台頭」が加われば、カープのシーズンはさらに明るいものとなるだろう。開幕から先発で活躍する左投手はジョンソンただひとり。中継ぎでは、仲尾次オスカルや江草貴仁らを起用するが、一軍でフル回転できているわけではない。
希望の左腕がいる。5年目の戸田隆矢である。高校時代は九州のドクターKと称された本格派は、150キロ前後の速球とスライダーを武器に、ここ2シーズンで64試合に登板、一軍に欠かせない戦力となっている。
彼を育てた鹿児島・樟南高校のグランドでは、高い銀色のポールからロープが吊り下げられている。このポールをよじ登ることで、野球部員は「しなやかな」上半身を作り上げてきた。また、学校の周囲は起伏と緑に富んでいる。ここを走り込むことで、下半身も鍛え上げられる。まさに、環境が、戸田に「しなやかさ」をもたらしてきたと言えよう。
ただ、プロ野球の世界に飛び込んで、戸田には「大きさ」や「力強さ」も求められるようになった。
入団当初、彼の体重は68キロであった。細身を悩み、先輩選手らにアドバイスを求め、食生活やトレーニングにも工夫を施した。すると4年間で約4キロのパワーアップに成功したのである。
ストレートもコンスタントに140キロ台後半をマークするようになった。しかし、戸田はさらなる成長を求めていた。