プレミア12を引きずる松井裕・増井と技術面が要因の西野――抑え投手受難の2016年【小宮山悟の眼】
2016/06/08
西野は勤続疲労よりも技術的な側面の問題
今年は抑え投手受難のシーズンだ。楽天・松井裕樹、ロッテ・西野勇士、日本ハム・増井浩俊……各チームで守護神と呼ばれる投手たちが、セーブシチュエーションで失敗するケースが目立つ。開幕から安定したパフォーマンスを披露し続けているのは、5月にパリーグの月間セーブ記録を作ったソフトバンクのサファテくらいだろうか。
不調の原因は各投手によってさまざまだ。
たとえばロッテ西野の場合は、ブルペン投手なら誰もが経験する、「何年も続けて活躍する難しさ」という壁に直面している。それは、勤続疲労のような肉体的なものではなく、主に技術的な側面に起因していると思う。
西野は鋭いフォークボールを決め球にセーブを積み重ねてきた。だがストライクゾーンからボールゾーンへ落ちる低めのフォークボールを見送られてしまうと、どうしてもカウントが悪くなり苦しくなってしまう。相手打者も対策を練ってくる。それが同じ武器で長い間、勝ち続けることの難しさだ。2、3年、結果を残したクローザーなら誰もがぶつかる壁だ。
そういう意味では、かつて西野と同じようにフォークボールを武器にして、セーブ記録を作り続けた大魔神・佐々木主浩の凄さが際立つ。一つの武器で戦い続け、結果を残し続けた。間違いなく、私が現役時代に出会った中で、No.1クローザーと呼べる存在だ。
もう一人、佐々木と並ぶ最高のクローザーとして、近鉄でプレーした赤堀元之の名前を挙げたい。赤堀の武器は、素晴らしいスピンのかかったストレートとスライダー。特にスライダーに関しては、あのイチローが、ひざ元に鋭く食い込む変化に手を焼いたほど。勝気な性格も抑え投手向きだった。
佐々木と赤堀に共通しているのは、それぞれフォークボールとスライダーという絶対的な決め球を有していた点だろう。残念ながら、彼らの武器と比べると、現在、各チームでクローザーを務めている投手たちのウインニングショットは見劣りしてしまう。自らの代名詞となるような、打者を圧倒できる決め球がなければ、名クローザーになるのは難しいのだ。