中日・大野VS西武・秋山、同級生対決。勝負の4打席にあったそれぞれの悔恨【中島大輔ONE~1対1をクローズアップ】
侍JAPANであり、両リーグを代表する好投手と好打者が相まみえた。中日・大野雄大と西武・秋山翔吾。6月11日、西武プリンスドームで繰り広げられた2人の対決は技術と技術がぶつかった濃密な4打席だった。
2016/06/13
秋山に残した試合としての悔い
対して、秋山が4度の対戦で最も悔しかったのが3打席目だ。1点を追いかける5回、1死から金子侑が再び四球で出塁したものの、秋山は1ストライクから外角低めのスライダーに泳がされてライトフライを打ち上げた。
「打たされたというか、もうちょっと何とかできたんじゃないかと思います。金子が1塁にいましたしね。(前の打席と)同じケースで回ってきたので、あそこの打席でうまくつなげていれば、先に勝ち越し点を取れたかもしれない。でも、そう簡単には打たせてくれないので」
前の打席と同じような場面で、大野は外角低めのスライダーという“ケガの確率が低いボール”で難敵を仕留めた。結果も含め、見事な選択だったと言えるだろう。
秋山にとって惜しかったのが、先頭打者で迎えた7回の第4打席だ。2ボール、2ストライクから外角低めのスライダーを捉えたが、強い当たりはショートの正面を突く。飛んだコースが少しでも左右にずれていれば、ヒットになっていたかもしれない。
「感じは悪くなかったです。でも、それも野球だと思います。そういうところに守っているのが野球なんじゃないですか」
この日最後となる秋山との勝負に勝った大野は、その後、一人の走者も出さずに最後まで投げ切った。左腕が勝利をつかむ瞬間を、秋山はネクストバッターズサークルで見届けている。
「個人としては、やられたなという感じではないです。結果的に4打数1安打なので、痛み分けというところじゃないですか。打率3割を基準にするなら打っていないと思いますし、全打席出ていなければ、結局は抑え切らきられたということ。彼が試合に勝ったことを言えば、彼の勝ちだと思いますし。チームが負けたことが悔しいというくらいですね」
秋山、大野ともに「悔しい」という言葉を残した。負けて悔しいのは当然、勝っても悔しさが残る。一流プロは高い次元を求めるがゆえに、彼らの対決は熱いものになるのだ。
野球では投手と打者が個人の勝負を重ねながらチームの勝敗をつけていくため、ドラマが生まれやすく、観る者を魅了する。
秋山と大野の「悔しさ」には異なる意味があり、同時に重なる部分もある。4度の直接対決の末に二人が口にした同じ言葉には、野球の醍醐味が詰まっている。