故障が心配な藤浪晋太郎と大谷翔平。PAPで見る投手の酷使度【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は投手の酷使度についてだ。
2016/06/18
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MLBではPAPが10万に近い選手はいない?
PAPが重要視されるMLBの状況、NPBとは全く異なる。
今季のア・ナ両リーグ通してのPAP10傑と日本人先発投手のPAPを見てみよう。
20万はおろか、10万に迫る投手もいない。
1位のスティーブ・ライトは今売り出し中のナックルボーラーだ。彼のPAPが最高、それでも3万。ライトは122球投げた試合があるが、平均では109球だ。
日本人先発投手の前田、田中、岩隈はどうだろうか。球数は厳格に制限される。PAPは極めて小さい。岩隈久志などは102球投げた試合が1試合あるだけ。あとはすべて100球以下だ。抑えていても100球が近づけば、イニングの途中でマウンドから降りることも珍しくない。
MLBでは、2013年にティム・リンスカム(13.2万)、CJウィルソン(10.9万)の2人が10万超えして以来、PAPが10万を超えた投手は出ていない。2人ともその後成績を落として、今季はMLBで投げていない。この事実もあって、球数管理はより厳格になっている。
2014年、レンジャーズのダルビッシュ有は、厳格な球数制限に異を唱えた。
「100球を超えて投げても中6日なら完全に回復する。それよりも中4日の登板間隔が問題だ」
この意見は波紋を呼んだが、その直後にダルビッシュがトミー・ジョン手術を受けたこともあり、アメリカで支持を得るには至らなかった。
NPBではいまだに「先発投手は完投して一人前」という考え方が根強くある。しかし球数を考えず投手を酷使することがリスクを高めるのは間違いないところだ。
議論があるにせよ、PAPは、NPBでも投手のリスクを知るうえで優位な数値と言えるだろう。