落合博満GMは本当に選手を見る目がないのか? 選手を生かすための〝自由契約〟活用
今オフ、中日ドラゴンズから自由契約となった選手が相次いで他球団への入団を決めている。なぜ中日は若い有望な選手を放出するのか――そこにはトレードを経験した落合GMならではの考え方がある。
2014/11/30
高い実力があるからこそ、自由契約を〝活用〟する
そこで、落合は〝自由契約を活用〟する。戦力外通告された選手を扱うドキュメント番組があるように、自由契約にもどこか暗いイメージがつきまとう。
だが、落合はFAと同義にとらえている。
監督時代から、落合が自由契約にした選手は他球団で活躍するケースが多く、「落合には選手を見る目がない」という批判があるが、これは落合の意図を理解していない。
なぜなら、他球団なら活躍できる可能性があるからこそ、落合は移籍がスムーズに運ぶよう自由契約にしているからだ。東北楽天で首位打者を手にした鉄平(現・オリックス)、同じく東北楽天で貴重なリリーバーになっている小山紳一郎、東京ヤクルトで選手会長も務める森岡良介――。高い実力を備えながら、どうしても戦力編成上、中日ではチャンスが少ないと考えられる選手には、セカンド・チャンスを得られる権利を早めに与える。もちろん、見返りは求めない。それが落合の自由契約なのだ。
一般社会でも、ヘッドハンティングや転職が当たり前のようになっている。プロ野球界も活発に人材が動く時代になったと言っていいだろう。
「うちでチャンスが少ないと感じたら、まだ可能性が大きい段階で次のチャンスをつかめるようにしてやらなければ。プロ野球は実力社会と言うけれど、やはり入った球団、出会った指導者で選手の運命は大きく変わる。そのことを球団や指導者は決して忘れちゃいけないし、選手はプロ野球界の財産だという考えを持たなければいけないと思う。いいじゃないか、うちで鳴かず飛ばずだった選手が他球団で活躍できれば」
このオフも、2011年にドラフト2位入団した吉川大幾が自由契約になったが、すぐに巨人と契約している。田中大輔はオリックス、森越祐人は阪神、そして、堂上剛裕は巨人育成でセカンド・チャンスを得た。中田亮二は社会人のJR東海で新たなスタートを切る。
1年、いや、1カ月でもタイミングを逃せばガラリと運命が変わるほど、プロ野球界の人事はデリケートで難しい。
だからこそ、落合は常にアンテナを高く張り巡らし、ひとりでも多くの選手が大成できるよう考えているのだ。