千葉ロッテ吉田、開幕スタメンも打撃不振で苦悩。コーチや大打者の助言胸に『柱』を作り上げる【マリーンズ浦和ファーム通信#22】
今季マリーンズの開幕スタメン捕手を務めた吉田裕太は、先発の涌井秀章を巧くリードし勝利へ導いた。しかし極度の打撃不振に悩み、開幕から2カ月して遂に登録抹消となった。そして今――見失いかけていた「自分」を取り戻すべく、二軍で懸命に練習に励んでいる。
2016/06/22
千葉ロッテマリーンズ
大打者に質問攻め。「自分というものを作り上げたい」
二軍でガムシャラに取り組む姿を大ベテランも見てくれていた。ある日、二軍調整中の福浦和也内野手が声を掛けてくれた。「暇なら食事にでも行かないか」。同じ千葉県出身の選手として憧れ、尊敬をする大打者からの誘いだった。
「一緒に食事をさせていただくのは初めてで、うれしかったです。もう、最初から最後まで野球の話をさせてもらった。ずっと野球の質問を次から次へとさせていただきました」
おいしい焼き鳥を頬張りながら2時間。ひたすら質問攻めをした。貪欲になんとかこの状況を打破しようとする若者の姿に、プロ23年目のベテランも応えた。野球観や打席でのいろいろな考え方、練習方法などを披露してくれた。
「あの人みたいに自分というものをしっかりと持っている選手になりたいと思いました。もっともっと練習をして経験をして、いつか自分というものを作り上げたい。自分のリード、打撃の根となるようなものを見つけないといけないと痛感しました」
一軍で打てず、結果を出せず悩み苦しんだ吉田だったが、二軍での日々の中で、なにかを見つけ、自分のアイデンティティーを確立すべく必死になっている。そして、その表情からは悲壮感は感じられない。どこか希望に満ち溢れるような、未来に向かって突き進む前向きなものが見てとれる。
その姿勢に福澤コーチも目を細める。
「野球にしても数学にしても、なにか問題を解く上で必ず柱となるべき考え方があるはずです。それをどこまで太く、たくましいものにできるか。それは自信になり、結果につながる。今、彼はそれを作り上げる作業をしている途中ではないでしょうか。もともと持っている素材は捕手としては素晴らしいのだから、これからが本当に楽しみですよ」
そう言って、全体練習後の個別練習でも、吉田の必死に練習をする姿に目を凝らす。
周囲の声を聞き、耳を澄ませた吉田は今、大きく成長を遂げる上で大事なポイントに達しているのかもしれない。本人もまた、それを自覚し日々取り組んでいる。
「結果に、一喜一憂をするようでは駄目。何事にも動じないほどの練習と研究を積み重ね、色々な人の話を聞いて、いつ呼ばれてもいいように準備をしていきたいと思います。とにかく、今は一日一日が大事」
開幕スタメンの栄光を手にし、そのリードで本拠地勝利の立役者の一人となりながら、その後、挫折を味わった若者。これまでの結果が伴わなかった日々は辛かったが、もう、ふさぎ込むことはしない。天性の明るさを武器に前を向く。貪欲に日々の中で成長の糧を探す。次に一軍に合流をした時に、大きく成長を遂げた姿を見せたいと思う。だから、いつ呼ばれてもいいように必死の日々を送る。