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伏見寅威の価値。「勝てる捕手」が魅せる隠れたファインプレー【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#233】

9月11日の西武戦はレイエスのサヨナラ弾で劇的な勝利を収めた。この勝利を呼び込んだ背景には、まさに今のファイターズを象徴する素晴らしい”守備”がある。

2024/09/14

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産経新聞社



日本ハム・伏見寅威

レイエスサヨナラ弾に匹敵するファインプレー

 西武22回戦(9/11、エスコン)はレイエス・デーだった。試合前、8月の月間MVP(初)の表彰があり、ファンにビッグスマイルを見せたかと思えば、11回は劇的なサヨナラ19号ホームランを放って球場を歓喜爆発させ、ヒーローインタビューのお立ち台では(プロポーズを実らせた同僚、バーヘイゲンのために)ホイットニー・ヒューストンの『オールウェイズ・ラブ・ユー』を歌うという八面六臂の大活躍だ。これまで森本稀哲(現・コーチ)等、札幌ドームで「歌うヒーローインタビュー」をやってのけた例はあるが、エスコン史上初ではないか。♪エンダ~~、が始まった瞬間、爆笑してしまった。きっかけはインタビュアーの無茶振りだったのだが、嫌な顔ひとつせず、すぐに乗っかってくれるなんて、驚異的なバッティングだけでなく人柄までもがMVP級だと思う。
 
 思えば昨オフ、日米の複数球団で獲得競争と報じられたレイエスだった。NPB球団ではソフトバンク、DeNAの名前が挙がっていたと記憶する。こんな勝負強い打者が例えばソフトバンクに行ってたらと思うと、ゾッとするじゃないか。まぁ、「獲得競争」の内実は不明だが、ファイターズに来てくれてホントに助かったのだ。
 
 あまりにも嬉しい試合だったので、9/12、13と試合のない日に繰り返し録画を見直していた。11回裏、レイエスのサヨナラホームランと並ぶ名場面は6回表、万波中正のレーザービーム発動だろう。実はこの回、万波は二度、レーザービームを見せている。最初は2塁打の長谷川信哉をセカンドに置いて、1死2塁で打者源田壮亮の場面。源田は低めの球をライトに弾き返す。このフライを万波が定位置より一歩下がった辺りで捕球、サードに矢のような送球を見せた。走者長谷川はタッチアップできない。万波の強肩が「抑止力」として作動したケース。
 
 2死2塁と2死3塁ではぜんぜんプレッシャーが違う。走者3塁ならバッテリーミスの失点もあり得る。投手も捕手も落ちる球に神経をつかう。が、この日は違った。
 
 2死2塁でバッターは西川愛也。スコアは0-0、マウンドにはバーヘイゲン。3球目を西川が振り抜く。打球は1、2塁間を割るゴロのヒット! もちろん2塁走者長谷川はホームに突っ込んでくる。万波の送球もすごい。本塁クロスプレーとなった。球審の市川(貴之)さんの判定はセーフ! 西武は隅田知一郎の好投に応える先制点奪取かに思われた。ここで新庄剛志監督がリクエスト要求。映像確認の後、判定が覆り、市川球審はアウトを宣告。ポジションで祈りのポーズを見せていた万波はホッとした表情でベンチへ戻る。
 
 この回のエスコンの盛り上がりがすごかったのだ。表だからファイターズは守備だ。守備であんなに観客を酔わせる。万波は2つの送球で西武の先制点を防いだ。まず、走者を3塁に進めなかったこと。そしてホームインを防いだこと。長谷川が3塁走者だったら、いくらレーザービームでも間に合わない。合わせ技で失点を防いでみせた。「ザ・プロ野球」と評すべきスーパープレーだった。試合が接戦になったのだから万波の働きは決勝打のレイエスに匹敵するのじゃないか。そして何より万波には華がある。これから終盤戦→ポストシーズンの活躍を予感させる「スターの輝き」を放っていた。

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