山田哲人、史上初の「四冠王」へ視界良好。「トリプルスリー」の昨年を上回るハイペース【新・燕軍戦記#26】
昨年は史上9人目のトリプルスリーを達成した東京ヤクルトスワローズの山田哲人が、今年はさらにハイペースで打ちまくっている。6月27日現在で打率、本塁打、打点、盗塁ですべてリーグトップに立っており、これまで誰も成しえなかった「四冠王」の可能性も大いにある。
2016/06/28
菊田康彦
昨年を上回るペース。打撃4部門でトップ
「意識はしてないです」
打率.332、25本塁打、63打点──。6月25日の中日戦(神宮)で逆転3ランを放つなど、3安打、4打点の活躍で、ついに打撃三冠トップ。リーグ最多タイの17盗塁を加えれば実に「四冠」でトップに立っても、ヤクルトの山田哲人(23歳)は淡々としたものだった。
「想像以上の結果でありえないぐらいの数字。これがキャリアハイだと思うんですけど、頑張って(2016年も)少しでも近づきたいと思います」
史上9人目のトリプルスリーを達成し、本塁打王と盗塁王の二冠、そしてリーグMVPにも輝いた昨年の契約更改で、山田はそう語っていた。年明けには、冗談混じりに「3割打って当たり前みたいに思われるのはプレッシャー。『山田は2割8分のバッターや』って思われたいです」と話したこともあったが、新たなシーズンが始まってみれば昨年の数字を凌駕する勢いで打ちまくっている。
昨年は交流戦終了時点で打率.298、11本塁打、32打点、12盗塁だったが、今年は本塁打と打点が倍増。打率も大幅にアップし、盗塁も昨年のペースを上回る。むろんシーズンはまだ折り返し地点を過ぎたばかりで、およそタイトルを意識する時期ではない。それでも過去に誰も成しえたことのない首位打者、本塁打王、打点王の三冠に盗塁王を加えた「四冠王」への期待は膨らむばかりだ。
5月末から3週間にわたって開催されたセパ交流戦でも、12球団最多の8本塁打、21打点をマーク。だが、左有鉤骨骨挫傷のために離脱した畠山和洋に代わり、6月14日から四番に座る山田は、それだけ打っても満足していなかった。
「チームが全然、勝てなかったんで(交流戦は6勝12敗で11位)、そんなに打ってる感じもしないんですよ。チャンスの場面で打てたかって言われると、打ててないなっていうのがありますし、得点圏打率も3割いってない(交流戦終了時点で.275)。そこで結果を残してこそチームも勝てると思うんで、ここっていう場面で僕が打てればと思います」
交流戦明けに口にしていたその言葉を、リーグ戦が再開された6月24日からの対中日3連戦(神宮)で実践してみせた。初戦では初回、2死三塁と先制のチャンスに中日先発の若松駿太から今季初めてライトへ本塁打を放つと、3回には無死二、三塁から2点タイムリーツーベース。翌日の2戦目も、初回から中日先発の左腕ジョーダンに逆転3ランを浴びせるなど、連日のお立ち台に上がった。
試合後にクラブハウスで記者に囲まれ、「自分が今、四番を任されてますし、そういうところ(得点圏)でしっかりと打点を挙げて、チームに勢いをつけるっていうのがスワローズの狙いでもあると思います」と話す言葉の端々からは、四番としての自覚が伝わってきた。