山田哲人、史上初の「四冠王」へ視界良好。「トリプルスリー」の昨年を上回るハイペース【新・燕軍戦記#26】
昨年は史上9人目のトリプルスリーを達成した東京ヤクルトスワローズの山田哲人が、今年はさらにハイペースで打ちまくっている。6月27日現在で打率、本塁打、打点、盗塁ですべてリーグトップに立っており、これまで誰も成しえなかった「四冠王」の可能性も大いにある。
2016/06/28
菊田康彦
「ほかのバッターじゃできない」。コーチも舌を巻く驚愕の一発
「あれはさすがにビックリしましたね。今シーズン一番(のホームラン)だったと思います」
ヤクルトの押尾健一戦略コーチ兼スコアラーがそう舌を巻いたのが、山田自身も「完璧にとらえることができた」と振り返った25日の逆転3ランだ。1点ビハインドの1回裏、1死一、二塁。1、2球目と外角の変化球を見逃して0-2と簡単に追い込まれながらも、3、4球目の変化球がいずれもワンバウンドになると、続く5球目は外角へのスライダーをファウルにしてカウントは2-2のまま。
「前の試合でも若松からホームランを打ってるし、山田はインコースを打てる技術もあるんで、簡単に(内角に)来るわけがないんですよ。ずっとツーシームとかチェンジアップとか(変化球が)外中心に来ていたし、僕は最後もそこ(外角)で収めると思ってたんですね」
しかし、中日バッテリーが6球目に選択したのはインコースのストレート。これがわずかに甘く入ると、山田はものの見事にとらえてレフトスタンド上段に放り込んだ。
「裏をかいた良いリードだったと思います。確かに若干、甘めに入ってましたけど、それでもあんなに見事に打てるような配球じゃないですよ。球速は140(キロ)ちょっとでしたけど、左ピッチャーがインコースに投げ込んでくる真っすぐって角度もあるし、技術がないと簡単に打てる球じゃないんです。これが初球からインコースに大ヤマを張って打ったならビックリはしないですけど、追い込まれてチェンジアップだとかいろんな球種をケアしながら、普通なら頭にないようなインコースをあんなに見事に打つわけですから……。ほかのバッターじゃできないですね」
この2試合で実に6打数5安打、2本塁打、8打点。これだけ打てば、続く26日の3戦目はひたすら警戒される。初回に2死一塁で回ってきた最初の打席はストレートの四球で歩かされたが、直後に五番の雄平が先制3ラン。同点で迎えた11回裏には、無死一、三塁の場面で勝負を避けられるも、1死後に代打の三輪正義がサヨナラ安打。自らはチャンスをおぜん立てする側に回り、チームは今季2度目の同一カード3連勝を飾った。
これで山田は今季、四番に座った9試合で打率.407、5本塁打、14打点。四球は11もあり、出塁率は.575に上る。この間、チームも6勝3敗と上昇ムードになってきた。そんな山田にファンも夢を託している。初めてファン投票でオールスターに選出され、しかも46万7633票でリーグ最多得票に輝いたのだ。
「ファンの方も僕のプレーが見たいと思って投票してくれたと思いますし、いいプレー、盛り上がるプレーができるように。打撃面でも守備面でも走塁面でも、活躍したいと思います」
ファン投票選出会見で山田はそう抱負を語ったが、ヤクルトはここへ来てエースの小川泰弘と守護神のローガン・オンドルセクが登録抹消になるなど、新たな逆風にさらされている。その一方で、一軍登板から遠ざかって今年は育成選手となっていた由規が、支配下復帰間近という朗報もある。チームはまだ最下位だが、一丸となってここから這い上がっていくしかない。