ロッテ・川満の数奇な野球人生――「同郷の憧れ・伊志嶺選手といつかQVCマリンのお立ち台に」【マリーンズ浦和ファーム通信#23】
ロッテでプロ4年目を迎える川満寛弥は苦しい時、辛い時にチームメイトの前で話をした自分の野球人生の原点を思い出す。
2016/07/01
千葉ロッテマリーンズ
遠い一軍のマウンド
そして12年ドラフト2位で千葉ロッテマリーンズから指名を受ける。10人しか部員のいない中学校野球部で唯一の補欠だった若者のサクセスストーリーを、誰もが固唾を飲んで聞き入った。最後は一軍登板への目標を語ってスピーチを終えた。
「夢は同じ宮古島出身で憧れていた伊志嶺選手と一緒にマリンのお立ち台に上がることです。それができるように、必死に頑張ります」
そう言って同郷の先輩に目を向けた。伊志嶺翔大外野手は照れくさそうに笑った。ちなみに、川満が小学校3年生で人生初めて野球の公式戦に出場をした時、対戦をしたのが、伊志嶺。ピッチャーをしていた伊志嶺は島でも有名な選手だった。緊張をしながら初めて打席に入った川満はこの時、右わき腹に死球を食らう。
「伊志嶺さんは覚えていないと思うのですが、あれが自分の野球人生のスタートなので、忘れる事はないです。雲の上のような人と対戦できたことがうれしかった。そして今、同じチームでプレーをしている。信じられないです」
プロに入って75キロだった体はトレーニング部門のスタッフたちによる緻密な計画の下で85キロまで増えた。キレのあるストレートと、川満カーブと呼ばれる独特の曲がりをする変化球を織り交ぜてのコンビネーションで一軍入りを狙う左腕に、首脳陣の期待は高い。なお、このカーブもまた、子ども時代に軟式ボールでの遊びの中で独自に編み出したものだというから、驚きだ。
シーズンは中盤まで差し掛かった。二軍ではローテの一角として結果を出してはいるものの、いまだ一軍のマウンドは一度も経験をしていない。そして、今年はプロ3年目で年下の二木康太投手に一軍で先を越されたという思いがある。だから負けじとファームで、結果を追い求めている日々を過ごす。
「二木は一軍のマウンドで堂々と投げている。焦るし、悔しい。自分も負けないような考え方やメンタル面を強化して、チャンスを作り出したいと思う」
苦しい時、辛い時はもちろんある。そんな時はスピーチでチームメイトみんなの前で話をした自分の原点を思い出す。10人しかいなかったチームで、一人だけ二桁の背番号を背負い、バット引きをしていた頃。あの日々から比べれば、今は夢のまた夢の世界。自然と勇気が湧いてくる。背番号「10」からのサクセスストーリーがどこまで膨らむか。誰もが楽しみにしている。