上沢直之という夢の終わり。思いを断ち、打ち崩す【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#239】
ファイターズの苦しい時期を先発の柱として奮闘した上沢直之。昨年ポスティングシステムでアメリカに渡ったものの結果が伴わず、来季より日本プロ野球界への復帰が決まった。しかし上沢が選択したチームは古巣ではなく福岡ソフトバンクホークスだった。
2024/12/22 NEW
産経新聞社
エスコンで待つ
その上沢直之がソフトバンク移籍を決めた。決めたらしいのだ。ホークスから正式なリリースが出た。それについてSNSは大荒れになっている。ポスティングでいったん米球界を経由して、自由契約で国内移籍するのはフェアといえるのか。それは制度の抜け穴ではないか。ルールは犯していないとしても、今後は見直すべきだ。いや、そんなことは上沢本人やソフトバンク球団へ向ける話ではなく、NPBのルール上の取り決めなり、ポスティングを認めた日本ハム球団へ向けるべきじゃないか。他人のビジネスをとやかく言うもんじゃないetc.
申し訳ないけど、その話題がぜんぜん飲み込めなかった。頭を素通りしてしまう。僕は怒りのポストを投稿するSNSアカウントのようには感情のスイッチを入れられなかった。それはルール云々(うんぬん)ということではない。上沢と縁が繋がってると思っていた。上沢本人とハム、ソフバン両球団の契約交渉の機微はわからない。わからないけれど、疲労骨折しているという右ヒジのために、もういっぺん観音様に願をかけてコーヒー断ちしてもいいなと思っていた。それは感傷なんだろう。ナーバスな甘ちゃんなのだろう。
だけど上沢直之、君は確かに僕たちファンの夢だったんだよ。近藤健介は九州に行ってしまったけど、アメリカから帰ったら、もしかして松本剛と2人、投打のキーマンで今度こそ日本一の歓喜の輪におさまるかもしれない。ソフトバンク球団が移籍決定のリリースを出すまで、僕はあらゆる新聞辞令に取り合わなかった。縁が続いていると思ってたんだ。
ホントはこの話題は避けたかった。真正面から向き合うと凹むからだ。今も凹みながらPCに向かっている。だが、避けるわけにいかない。思いを切断しなけりゃならない。伊藤大海が気持ちを込めて言ってくれた。
「僕のホーム開幕戦に来るんじゃないですか。志願してでも来るんだろうな、と僕は思っていますね。それぐらいはしてくれないと、ファイターズファンも納得いかないかなと」
感傷は来年には持ち越さない。ファイターズは打つだけ。打ち崩すだけ。君はもう夢じゃなくて、相手チームのピッチャーだ。上沢直之という夢を終わらせる。早くケガを治せ。エスコンでお待ちしている。