今回の金子千尋のFA宣言から考える〝ルールの不備〟【小宮山悟の眼】
千葉ロッテ、さらにはニューヨーク・メッツでプレーし、現在プロ野球解説者・評論家の小宮山悟氏の連載がスタートする。さまざまな球界のニュースや動きに対して、小宮山氏の眼にはどう映るのか? 新しい野球のミカタをファンの皆さんに提示していきたい。第1回目は、今回の金子千尋投手の国内FA宣言についてだ。
2014/12/07
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金子の決断は、間違っていない
オリックス金子千尋は来季、どこの国のどこのスタジアムのマウンドに上がっているのか。
ポスティングシステムでのMLB移籍を希望すると表明しながら、同時に国内フリーエージェント(FA)権を行使したことで、その去就が注目を集めているが、今回はその〝金子の一件〟を通して、ポスティングシステムとFAについての私見を述べたい。
まず、巷では〝騒動〟のように報じているメディアもあるが、個人的には、今回の件を騒動とも、ましてや事件とも思っていない。金子という一人の選手と、オリックスという一つの球団の契約交渉の過程における単なる出来事。スポーツ紙などの報道内容や関係者から漏れ伝えられた情報から判断すると、私の目にはそう映る。
先に記したように、金子が球団のポスティングシステムの活用を迫る意味で、国内FAを利用したことが物議を醸しているようだ。しかし、私は彼の選択が非難されるべきだとは思わない。彼の執った手法は、あくまでもルールの範疇にある行動であり、球団との話し合いにおける交渉術のひとつだ。
ルールに不備があるのが問題だ
ではどうして問題がこじれ大きくなったのか。結論から言えば、日米間の選手移籍に関する決まり……つまりポスティングシステムと海外FA権のルールの不備に他ならない。野茂英雄が海を渡ってから20年が経とうとしているが、誰もこれほど多くの日本人選手が米国でプレーする時代が来るとは想像できなかったため、ルールがその現状に追いついていないわけだ。
96年、伊良部秀輝が三角トレードでメジャー移籍したことが発端で、ポスティングシステムが作られた。10年オフ、岩隈久志とオークランド・アスレチックスの入団交渉が決裂したことが加味されて、昨年制定された新ルールでは、選手が複数球団と交渉できるようにもなった。今回の金子の件に関しても、ポスティングシステムでのメジャー移籍の希望表明と、国内FA権を同時に行使するという、一見矛盾している行為に対して、いずれ何らかの対処がされるはずだ。
ただ、いずれの場合も何か問題が起きてから、そのルールの穴を埋める処置がとられている。もちろん、ルールや決まりごとには、そうやって作られていくという側面がなくもないが、その問題の多くが想定するに難くない事象ばかりなので、一刻も早い完全ルールの制定が求められる。