「大競争」捕手陣でも伏見寅威は別格。たった1回だけのプレーに凝縮されたプロの真髄【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#242】
新庄監督4年目のキャンプはこれまでと雰囲気が違う。選手層が厚くなり、各ポジションまさにし烈なポジションの争いだ。しかしキャッチャー陣を見てみると、やはり伏見寅威の存在感が頭一つ抜けている。
2025/02/08
産経新聞社

期待値の高い選手が揃う
2025春季キャンプは第2クールに入った。第1クールのラスト、国頭組は紅白戦を実施し、今川優馬、有薗直輝、それから明瀬諒介が猛アピールしている。天候は曇りがち(寒いからドラッグストア店頭で使い捨てカイロ売ってる!)だけど、雰囲気はとてもいい。このところファイターズのキャンプといえば「新庄ビッグボスのスター性」とか「チームメイトの仲の良さ」みたいな部分にスポットが当たっていたと思うが、今年の「雰囲気がいい」はぜんぜん違う。新庄剛志監督が目立たないのだ。チームの明るさ、親密さは変わらないのだが、緊張感が違う。ひと言でいうと皆、メラメラと競争心、対抗心を燃やしている。
チームスローガンは今年も「大航海」のワードが踏襲されたが、実際問題「大競争」である。どのポジションにもレギュラークラスが何人も揃ってて、こっちを使えばあっちが使えず、めちゃめちゃ層が厚くなった。さすがに万波中正のライトは動かないと思うが、他がどうなるかわからない。例えば外野は矢澤宏太、水谷瞬、五十幡亮汰あたりの仕上がり次第では、松本剛の開幕スタメンが盤石ではないと思える。
もう新庄さんは目立つ必要がないのだ。言わなくても皆、メラメラしている。レギュラーを勝ち取ろうと燃えている。これはピッチャーも同じで、一度ブルペンに達孝太、福島蓮、柳川大晟が並んで投げるシーンがあった。口にこそ出さないが明らかに意識している。そのメラメラ感が最高だった。どの顔にも「今年こそオレの番だ!」と書いてある。
GAORAのキャンプ中継、2/6(第2クール初日)を見ていて、またメラメラ感満載のシーンを目にした。サブグラウンドで田宮裕涼、進藤勇也、吉田賢吾の3人がキャッチャー防具をつけてノックを受けている。山田勝彦コーチが2塁方向からノックして、3人が捕ってホームベースにタッチするという、ちょっと見ると野球の向きが逆に思える面白いノックだ。内野ノックのように左右には振られない。あくまでホーム付近でバウンドに合わせてミットをさばく。金網フェンスの向こうに大勢ファンが立ち見していて、これは羨ましかった。だって田宮、進藤、吉田ですよ。伏見寅威を頂点に清水優心、アリエル・マルティネス、郡司裕也、古川裕大、梅林優貴と居並ぶ「大競争」捕手陣にあって、「今年こそオレの番だ!」の思いをたぎらせてる3人。
何とかして伏見さんに取って代わろう。3人が3人ともその野心を秘めている。田宮は去年のジャンプアップを本物にしたい。進藤は大学捕手ナンバーワンの肩書が泣いている。2年目、ブレークしなかったらこのまま埋もれてしまいかねない。吉田は現役ドラフトで巡ってきたチャンスを何が何でも生かしたい。
何しろ、一昨年ドラフト2位で進藤を獲って、「えー、こんな捕手ばっかりなのに捕手を獲る?」「でも、進藤だもんな、行けたら行くよなぁ」と思ったのだ。それが去年、現ドラで吉田を獲って「えー、こんな捕手ばっかりなのに捕手を獲る?」「でも、吉田賢吾だもんな、行けたら行くよなぁ」と2年連続で納得させられたのだ。まぁ、吉田は別ポジションの起用も視野に入るが、とにかくファイターズは捕手をめちゃめちゃ獲ってる。そりゃ「大競争」にもなろうってものだろう。
現地ファンは3人のメラメラを生で味わった。生でそんなもん見られたら眼福ってやつだ。一方、GAORAで見ているファンは3人のサブグラウンドの競演を解説・中嶋聡&鶴岡慎也で楽しむことができた。ハムの現役、コーチ歴を持ち、元オリックス監督でもある中嶋さんがGAORA放送席に来てくれるのは大変ありがたい。もちろん中嶋さんはオリックス時代の伏見寅威を語ることもできる。「大競争」捕手陣をどう絵解きしてくれるだろうと興味津々だった。そこに最も現場を踏んでいる鶴岡氏の観察眼がプラスされる。解説陣に名捕手が揃った。