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水谷瞬、3アウトで珍しいプレー。地道な意識づけが示す指揮官の「外野手の感性」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#243】

練習試合の中日戦、2回裏スリーアウトチェンジの場面で水谷が見せたバックホーム。このプレーから、新庄監督の一貫した外野手目線によるチームづくりの一端が見て取れる。

2025/02/22 NEW

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産経新聞社



硬いフェンスに物申した指揮官

 ファイターズの外野手はキャンプ中、このスリーアウトめのバックホームを墨守している。もちろん新庄剛志監督の指示によるものだ。アウトがコールされチェンジが成立したら、普通はただベンチに戻る。スイッチオフ。アクチュアルタイムにはならない。そこに練習をもう一つ足したのだ。すべてバックホーム。内野手が中継プレーに入り、ホームで架空のクロスプレー(?)が行われる。ファイターズの本塁クロスプレーというと昨シーズン7月の「万波中正vs周東佑京」が有名だが、こういう地道な意識づけはとても面白い。いつか水谷瞬も万波級のビッグプレーでパの俊足ランナーを刺すのじゃないか。もし、今季そんなシーンを見たら、積み重ねの成果を実感しよう。
 
※もっともこの「すべてバックホーム」、対外試合ではNGを食らうこともあると聞く。まぁ、相手チームは普段の感覚でいるから、ふいに思いも寄らぬ送球がやってくることになる。現状ケガなどに至ったケースはないが、ギクッとするのだろう。
 
 僕は新庄剛志という人の「外野手の感性」を思う。1年目のキャンプで外野の守備位置から選手のフリーバッティングを観察したり(そんな監督初めて見た!)、1BOXカーの天井に乗って、「ここより上を通る山なりの送球はしないように!」と指示したり、新庄監督の外野手目線は一貫している。これまでプロ野球の名将、名監督といわれる人はキャッチャー出身が多く、外野出身は稀であった。もしかすると新庄剛志は「外野手の感性」を大胆に持ち込んだ監督像を構築するのかもしれない。
 
 この練習試合・中日戦ではもう一つ、「外野手の感性」を感じさせるエピソードがあった。8回表、2死1塁の場面でファイターズ、マルティネスがレフトに大飛球を放ったのだ。それを中日のレフト樋口正修が捕球を試み背走、顔からフェンスに激突し、担架で運ばれるアクシデントが出来(しゅったい)する。幸い樋口は軽い脳震とうで済んだようだが、新庄監督はメディアに向けコメントを出した。
 
「プロ野球のキャンプを1カ月張るのであれば、あのラバーは間違いなく替えないと。ファイターズの球場があの硬さなら、僕がお金を出して替えます。選手の寿命を短くする一つのポイントになる」(試合後談話)
 
 新庄監督はかつて五十幡亮汰が北谷でフェンスに激突したのを覚えていた。そしてこの中日戦はケガをしないよう深めに守らせていたという。翌日、新聞を通しこのエピソードは渡久地政志北谷町長の知るところとなった。町長はさっそく現地を視察、フェンスラバーの硬さを確認して、来春のキャンプまでに張り替えると約束したのだった。トピカルな言い方をすれば硬いフェンスも「ルール違反ではない」が、みんなハッピーな方がいい。とても前向きな提言だったと思う。

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