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西武・金子侑司の生きる起用法は? 「かっこいい選手に見られたい」独自のセルフコントロールで存在感

5位と低迷する西武の中で、数少ない光と言えるのが金子侑司だ。4月20日以来、スタメン出場を続け、脚を武器にその存在感を見せつけている。

2016/07/25

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ウエストされても盗塁を決めることができる走塁技術

「あと1本が出ない……」

 今季、西武の田邊徳雄監督が試合後に何度もそうこぼしているが、ファンにとっては最も聞きたくない言葉だろう。

 リーグ2位のチーム打率.265を誇りながら、チーム得点数は同4位の372点(今季の成績は7月24日試合終了時点、以下同)。中村剛也やエルネスト・メヒア、浅村栄斗らを擁する打線は球界トップレベルの長打力を誇る一方、足や小技などベンチワークで得点をもぎ取る力に欠けることが、5位に低迷する一因となっている。

 そんな課題を少しでも解決するためか、今季、首脳陣が起用にこだわっているのが大卒4年目の金子侑司だ。

 スローイングに難があり、リーグ最多の14失策を記録しているものの、ショートやサード、あるいはライトとして4月20日の日本ハム戦から全試合スタメン起用されている。ときには森友哉をベンチに追いやり、ライトに入るほどの期待度だ。

「最後まで出場を続けていかないと、いままでやってきたことの意味がなくなっちゃうと思います。最後までなんとか食らいついていけるように」

 この言葉を聞いて感じたのが、金子侑の変化だ。高い身体能力を誇る一方、以前は突如集中力を切らすようなプレーが見られた。それがプロ入り4年目の今季、変わってきているのではないだろうか。

 金子侑はもともと、独自のセルフコントロール術を持っている。プロ入り1年目の夏、こんな話をしていた。

「自分を見た人にカッコいいと思われたいという気持ちがすごくあります。カッコいいと思われるためにはヒットを打たなければいけないですし、いいプレーをしたり、盗塁をしたりする。打てなくても守りでいいところを見せたり、守備でミスをしても打って走っていいところを見せる。自分自身のモチベーションを保つ方法といいますかね。そういう意味で、人からカッコいいと思われるようになりたいです」

 甘いマスクを持つ男の承認欲求。それが特に輝くのは塁に出た直後だ。

 たとえば7月19日の千葉ロッテ戦では2回の第1打席にセンター前安打(適宜打)で出塁すると、続く炭谷銀仁朗の打席で相手バッテリーが初球をウエストした直後、2球目に迷いなくスタートを切った。2球続けて大きく外されたものの、見事2塁を陥れている。

「2球連続ウエストはないだろうと思って行きました。セーフになって良かったです(笑)」

 昨季、金子侑は盗塁を18度試みて7回アウトになった一方、今季は34回走って8度しか失敗していない。成功率を高めるうえで、ポイントになったのが奈良原浩内野守備走塁コーチに伝授された心構えだ。

「最初は欲しがって、けっこう無理くり行っていた部分もあります。そういうときに奈良原さんから、『そんなに無理に行かなくても、お前が普通に塁にいるだけで相手は嫌だ。普通にさえやれば、数はこなせる』と気持ちの話をしてもらいました。それからは行くときと行かないときで、強弱をつけようと思っています。カウントを見たり、リードの幅を工夫したりしていますね」

 盗塁数は、リーグ最多の糸井嘉男(オリックス)の30個に次ぐ26個。二人の置かれた状況を比べると、金子侑の高い成功率と盗塁への意欲が目を引く。

 チームで3番を任される糸井が打席数371、出塁率.385に対し、9番での起用が多い金子侑は打席数308、出塁率.345。糸井に比べて少ないチャンスで積極的に走り、成功させているのだ。

 その要因には50メートル走5秒7の俊足や、スピードに乗ったスライディング技術はもちろん、失敗を怖がらずに勝負できるメンタルがある。また、エラーを犯した直後の打席でも、積極的に打ちに行って結果を残すことができる強心臓ぶりを見ても、いわゆるプロ向きといえるだろう。

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