多角的な視点で発信する野球専門メディアベースボールチャンネル



Home » プロ野球最新情報 » 日本ハム » 開幕1週間で見た、人生が変わる瞬間。「型破り」の指名に結果で応えた野村佑希【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#246】

開幕1週間で見た、人生が変わる瞬間。「型破り」の指名に結果で応えた野村佑希【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#246】

開幕から好調な滑り出しを見せたファイターズ。その要因として、昨年のファンフェスタで新庄監督がサプライズ発表した「開幕投手」「開幕4番」「開幕抑え」の選手たちがその期待に応えているからだ。

2025/04/05

text By

photo

産経新聞社



日本ハム・野村佑希

ファンフェスでの突然の指名は「常識はずれ」?

 開幕から1週間、本稿執筆(4/5未明)の段階でファイターズは4勝2敗である。3連勝の後、ホームで2つカード頭を落しているが、相手投手がモイネロ、宮城大弥とリーグを代表する好投手だ。簡単に打てたら苦労はない。それよりもチームの雰囲気の良さに目を向けたいと思う。球団63年ぶり(!)の開幕3連勝で好スタートを切れた裏には、昨年11/30ファンフェスタで早々と「開幕投手」「開幕4番」「開幕抑え」に指名され、人には言えぬプレッシャーを抱えて年を越した選手らの大活躍があった。
 
 今だから笑って話せるが、あのファンフェスタでの新庄剛志監督の突然の指名はビビった。正直に言ってほしい。当日、大歓声が上がったけれど、あのとき驚かなかった人はいないんじゃないか。ていうか、当人たちがびっくりしていた。野村佑希の表情を覚えているだろうか。まったくのぶっつけ。ぜんぜん打診なく、あの場で初めて聞かされたのだ。サプライズ指名にエスコンフィールドはドッカン、ドッカン盛り上がる。ただプロOBの解説者など、野球を知ってる人ほど、あの「早すぎる指名」に一抹の不安を覚えたのだった。
 
 プレッシャーがハンパないのだ。オフの間も気を緩められないし、自主トレ、キャンプでも「開幕へ向けて調整のほうはどうですか?」とずっとカメラやマイクを向けられる。練習試合、オープン戦は注目の的だ。ちょっと調子を落したら新聞に何を書かれるかわからない。よっぽどの大エースならともかく、初の大役を任される場合は直前までナイショにして、世間の風圧から守ってやるのが普通だろう。新庄監督の「型破り」の指名がうまくいくかどうか、ファンの関心はその一点に集中した。もちろんSNSなどで一部ファンから「常識はずれ」の声は上がっていた。
 
 僕は金村尚真はプレッシャーに崩れない気がしていた。また齋藤友貴哉は多少のピンチを招いても「さいこうゆきや」(自分で作った大ピンチを自分でしのいで盛り上がる)で乗り切れると思った。とにかくいちばん心配なのは野村佑希だった。野村はむちゃくちゃマジメなキャラクターだ。根(こん)をつめて、自分を追い込んでしまう。それが長所でもあるから、難しいのだ。これまで野村佑希は周囲の期待に応えたくて、徹底的に自分を追い込んできた。ときには痛々しいくらいマジメに。果たして稀代のモチベーター、新庄監督の選手操縦術が彼に通じるだろうか。「開幕から15試合」は4番を任せるという、その15試合の区切りは余計プレッシャーにならないだろうか。栗山英樹前監督が中田翔にそうしたように「結果が出なくたってお前を4番から外さない」と言ってやるほうがよかったのじゃないか。
 
 開幕戦、金村尚真の快投にはしびれた。予想のはるか上を行く落ち着き&力強さ。何と今井達也に投げ勝って、08年ダルビッシュ有以来の開幕完封勝利(自身、初完封勝利!)だ。試合後は「開幕投手と言われて不安だった。今日勝つことを目標にやってきた」とコメント、プレッシャーをむしろ自分を燃えたたせるエネルギーに変えてしまったらしい。そのメンタルの強靭さに感じ入る一方で、僕は開幕戦4の0で終わった野村佑希にハラハラした。たぶん僕だけじゃないだろう。ある意味、ジェームス野村佑希は開幕シリーズの「主役」なのだった。
 
 第2戦、野村は5の1。1本ヒットが出た。ヒーローは上川畑大悟だが、ジェイも1本出てホッとしているはずだ。僕は開幕戦は応援仲間と内野指定C席、第2戦は自宅でテレビ観戦、第3戦は文化放送の持ってる年間指定席に招待してもらっていた。バックネット裏のプレミアムシートだ。そんな良席でまさかあんなドラマを目撃することになろうとは。僕はこのチケットは生涯(クッキー缶の)宝物入れにしまって大切に保管する。

1 2


error: Content is protected !!