開幕1週間で見た、人生が変わる瞬間。「型破り」の指名に結果で応えた野村佑希【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#246】
開幕から好調な滑り出しを見せたファイターズ。その要因として、昨年のファンフェスタで新庄監督がサプライズ発表した「開幕投手」「開幕4番」「開幕抑え」の選手たちがその期待に応えているからだ。
2025/04/05
産経新聞社
新4番打者の誕生
ああ、読者よ、ジェームス野村佑希がついにやってのけた。自分の身の丈をひょいっと飛び越え、本物の4番打者になった。開幕シリーズ第3戦、西武の先発はカムバックに懸ける元エース、高橋光成。野村は第1打席、いきなりタイムリー2ベースを放つ。「ホームランより2塁打」「4の1でも、その1でタイムリー」と新庄監督に注文された通りのバッティングだった。監督は野村をクラッチヒッターに育てたいのだ。チャンスにめっぽう強い中距離砲。やっと開幕3戦めにしてファイターズの4番が仕事をした。
と思ったら、ジェイのスケールの大きさはそんなもんで収まるもんじゃなかった。第2打席は1号3ラン、第3打席は2号2ラン、いずれも初球だった。真っ芯でとらえた打球はベルーナドームのレフトスタンドへ。もう、僕は拳を突き上げっぱなしだ。やったぞおお。やったやったやった。野村佑希が「4番合格」だ。こんなドラマがあるんだな。新庄さんの賭けが当たった。ちっくしょう、心配して損したぜ。
僕は2ホームランとも初球を叩いたことを評価する。つまり、準備ができてたってことだ。打席に入る段階で考えが固まっていた。気持ちも入っていた。特に第2打席は高橋光成が四球で走者を出した後だ。初球を狙う。内角の難しい球。だけど、ジェイはそれをうまく捌(さば)ける。打球の行方を見て、1塁ベースを回ったところで右手を高く掲げた。この瞬間をとらえた写真は後に球団公式Xでアップされた。僕はそれをiPhoneの待ち受けにしている。目にする度に心が震える。ファイターズに新4番打者が誕生した瞬間。開幕シリーズの主役が舞台中央に立った瞬間。
開幕第3戦はそれだけでなく、齋藤友貴哉がゲームを締めくくって見せたのだ。早すぎる指名で騒がれた「開幕投手」も「開幕4番」も「開幕抑え」もすべてうまく行った。これがチームの雰囲気をグッと上げてくれた。あらためて新庄監督のモチベーターぶりに敬服する。野村佑希はホームに戻ってのソフトバンク戦でも第3号を放った。それだけでなく現役ドラフトで獲得した吉田賢吾も使い続け、ソフトバンク戦オリックス戦の2試合連続ホームランを引っぱり出してしまった。よくM-1グランプリの芸人さんで言うことだ。人生が変わる。開幕から1週間、ファンは選手らの「人生が変わる」瞬間を目撃している。野村が、金村が、齋藤が、吉田が新しい自分を生きようとしている。