夏に強い筒香嘉智、三冠王争いへ参戦。山田哲人とデッドヒートの始まり【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
セリーグの打撃部門のタイトル争いは7月に横浜DeNAの筒香嘉智が一気に数字を伸ばしたことで、東京ヤクルトの山田哲人とハイレベルな「三冠王」争いの様相を呈してきた。
2016/08/04
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筒香進化の証明は「対右投手」
ヤクルトの山田哲人の三冠王に注目が集まるなか、7月に爆発的な打棒を見せたのが横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智だ。
8月2日試合終了時点で、打率は.332で山田と2厘差の3位、本塁打は32本で山田に2本差をつけた。打点は75で山田と2点差の3位。筒香にも三冠王の可能性が出てきたのだ。
7月はNPB記録となる6回のマルチホームランを含む16本塁打。これはNPB歴代2位タイの記録だ。NPBでは月間15本塁打以上を記録した選手は11人いる。
この記録の大部分は1970~80年代のもの。当時の球場は両翼90m、中堅110m程度で、狭い球場で記録されている。現在の球場は両翼100m、中堅120mが標準。21世紀に入って3人が記録したが、これらは特に高く評価されるべきだろう。
筒香はこの顔ぶれの中では1994年の江藤智に次いで若い。今後、NPBのいろいろな記録を更新する可能性もあるだろう。
さて今年の筒香は「右投手に強い」という大きな特徴がある。
年度ごとの左右投手別打撃成績を見てみる。
左打者である筒香は、左投手を苦にしなくなったことで、レギュラーの座を得た。松井秀喜やイチローなど優れた左打者は左投手を苦にしないものだ。
しかし、野球界では右投手が圧倒的に多い。左投手を苦にしないのはいいが、右投手をしっかり打ち込まないと成績は上がってこない。
筒香はこれまで、右投手から3割を打ったことがなかったが一転し、今シーズンは.361と打ちまくっている。
対戦数の多い右投手から本塁打を荒稼ぎしていることがわかる。この2年ほどで一気に才能を開花させたが、数字が示すように確実に進化を遂げている。