日ハム一挙8点、ビッグイニングの見立て――マリンに「魔」そのものが現れた日【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#247】
強風が吹き荒れた15日、ZOZOマリンで行われた試合は6回にファイターズが8得点を挙げて勝利を収めた。3点ビハインドからの逆転劇。あの6回、いったい何が起きたのだろうか。
2025/04/19 NEW
産経新聞社

試合展開をも左右するマリンの海風
びゅうびゅうと強風が吹き荒れ、まだ残っていた桜を散らしてしまった4/15(火)、鎌スタ→ZOZOマリンのハシゴ観戦に出かけた。鎌スタはイースタンF-L3回戦、ZOZOマリンはM-F1回戦だ。昼間2軍を見て、夜1軍を見るのは「親子ゲーム」なんて呼ぶ場合もある。午前中家を出て、夜が更けてから帰ってくる。その間、ずーっと球場にいる。野球バカのフルコースなのだ。
イースタン西武戦は福島蓮と與座海人という1軍級の先発投手だった。しかも、試合前、西武ベンチ前で背番号1がバットを振っている。うおお、栗山巧が見られる。ハムは水谷瞬がスタメンだ。風が強くてピッチャーは神経を使いそうだなと思ったら、西武育成、背番号135の仲三河優太にいきなりホームランを食らった。ライト方向は風でグーンと伸びるようだ。3回、栗山巧がタイムリー、その裏淺間大基が2ランを放ってそれぞれ実力のあるところを見せたが、この試合の主役は大阪桐蔭出身の左打者、仲三河だった。何とそこから2本ホームランを放って、手がつけられない。昨シーズン、2軍で2ホーマーだったようだが、今年はこの日だけで3本だ。いや、僕はZOZOマリンの試合を覚悟した。パカーンと打ち上げたら何が起きるかわからない。ただでさえ風が魔物となる球場だ。それがこの日は最大風速19メートル(ニッポン放送ショウアップナイター公式のX投稿より)と凄まじかった。
幕張本郷から連結シャトルバスに揺られながら、主題は風になるだろうと思った。ZOZOマリンは野球の不思議さ、面白さを際立たせる特異な球場だ。僕はチバテレの高校野球中継も欠かさずチェックして、千葉県有力校の名将がZOZOマリンの風をどう読み、どう対策しているかに注目している。センターポールの旗の向きと違って、例えばライトのこの地点では風が巻いてフライがこう流される、というようなゾクゾクする話が出るのだ。今はドーム球場が主流になったが、グラウンドを読み、風を読み、西日や照明を読むのも野球の妙味だろうと思う。
グラウンドの凹凸によるイレギュラー、風のいたずらによるポテンヒット、西日や照明が目に入るエラー、そうしたものは試合の構成要素のなかの「偶然」の要素だ。だけど、ただ「偶然」で済ましてはもったいない。そうした諸々を味方につけて、勝敗の「必然」をつくりだす。例えば「ZOZOマリンは変化球が切れる球場」というのが通り相場だ。海から吹きつける風がバックネット側のスタンドに当たって逆の向きに吹く。それがフォークをより落とし、スライダーをより曲げてしまう。この風のブレーキを自在に操れば魔球投手ができあがる。オリックス時代の野田浩司が1試合19奪三振の記録をつくったのもこの球場だった。また今季、ソフトバンクから移籍してきた石川柊太がここを得意にしていたのも同じ理由だ。